有田先生の小話②
浸食と堆積。
その繰り返しによって大地ができた。その学習での余談。

アメリカにある国立公園「グランドキャニオン」を知っていますか?
深さ1000m以上もある断崖になっていて、素晴らしい景色が見られます。
そこへ日本の人たちがツアー観光でやってきました。
立ち入り禁止などの柵などありません。
転落事故が起きたら、それは自己責任です。
みんな足元に気を付けながら、そおーっと下を覗いたりしていました。
さて、出発の時刻。人数を確認していると一人足りません。
まさか、落ちたんじゃ?
みんなで探すことになりました。
しばらくすると、乗客の一人が下の方から弱弱しい声がするのに気が付きました。
助けを呼んでいるようです。
声のする方へ話しかけると、返事がありました。
落ちたのですが、うまい具合に岩に引っかかって、その窪みにいるというのです。
上からはその窪みは見えません。
自分で上がってこれますかぁ?
無理でーす。
力が入らないんです。手も、足も骨折しているみたいで。

ツアー客の一人がバスに積んであったロープを持ってきました。
自分で登って来てくれたらいいんですが、できないみたいです。
助けに行くのも危険。誰一人名乗り出ません。どうしましょう。
一人が名案を思い付きました。
ロープを口にくわえることはできますかぁー?
歯は丈夫なんです。やってみまーす。
と返事が来たので、サーカスみたいに引っ張ることにしました。

崖の上では、ロープを引っ張る人、がんばれー、がんばれーと声をかける人。
引き上げているうちに、ようやくその人の頭が見えてきました。
必死にロープを咥えているようです。
大丈夫か! がんばれー!
みんな心配して口々に声をかけています。
もう少しで手が届く、正にそのときです。
大きな声で、
おい、大丈夫か! ケガはどうだ?
と声をかけた人がいました。
返事がないので、いらいらしてしまったようです。
黙ってちゃ分からん。おい、なんか言え!

あまり強く言われたのでしょう、返事がありました。
だいじょうぶです、
の「だ」だけが聞こえ、ロープの手ごたえが一気に軽くなりました。
男の人の姿が見えなくなりました。
何で返事しちゃうかな。
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