T1 担当による算数の「授業開き」について、ご紹介します。
T.T.(team teaching)のT1として1年間、
5年生の3学級に算数の授業をすることになりました。
その、初日の授業です。
この記事が、現場のお役に立てたら幸いです。
※T.T.下での授業ですが、
今回はT2である担任は個別指導に回り、授業進行上の役割はありません。
※ 授業観についてはこちら Ri-せんのお役立ち情報 – 現職の先生方のお役に立てるよう情報発信します (ri-sen.com)
初日に向けて
自己紹介は、
手短に済ませることにしました。
始業式でも、4月の学年だよりでも紹介されています。
元からいる職員なので「顔くらいは知っている」先生です。
名乗る程度でいいでしょう。
授業は、
学力の習得をねらいとしていることは勿論ですが、
算数を介して子ども達と楽しく過ごす時間としたいと思っています。
初日の出会いで、
先生の算数授業はおもしろそうだ、と思ってくれたらよしとします。
教科書を開くと、最初の単元は【小数と整数のしくみ】です。
そこで、数に関する事から授業を始めることにしました。
以下の内容
・声を出させる(発言は「通る声」で!)
・間違えてくれて ありがとう(授業者からのメッセージ)
〇「イカ・タコ」ゲーム → Jump there.
・別バージョン (試み)
〇数字はいくつ? → Jump there.
・数字はたくさんある


〇数を当てる (予言マジック) → Jump there.
・なぜ当たった?(予言の仕方)
〇切ったら何本? → Jump there.
・簡単にして考えてみる(操作を式にする)
声を出させる (「通る声」で!)
算数の「授業開き」は、担任より紹介を受けた後、始まりました。
T: 1年間、皆さんと算数の授業をすることになりました。よろしくお願いします。
初めの挨拶を終え、
授業中の声の大きさについて話をしました。
こういうことは、初めに言っておきます。

発言するときは、みんなに聞こえる声で、通る声でお願いします。
ちょっと、声を出す練習をしてみましょう。
1、2、3・・・というように数詞を言ってもらいます。
手刀で「はい」と促されたとき、言います。
声が小さい場合は、やり直し。
張りのある声を出すように励まします。


ポン、ポンとリズムよく、10まで進んだところでひとまず終了。
ここから難易度を少し上げます。
間違えてくれて ありがとう



1から10まで数えました。
みなさんは5年生ですから、ちょっと難しくしましょう。
8を言ってはいけません。代わりに「タコ」と言ってください。
5、6、7、と来たら次は「タコ」です。 分かりましたか?
8番目の子どもが、うっかり言ってしまって笑いが起きました。
にこにこ顔でフォローします。
T: みんなを笑わせてくれてありがとう。教室がぱっと明るくなりました。
誰だって間違えます。 Don’t mind! 気にしない、気にしない。
間違えた子どもから始めて、1~10まで行きました。
更に難しくします。
「イカ・タコ」ゲーム
T:レベルを上げます。
3と言う代わりに 「イカ」と言ってくささい。8は「タコ」です。
テンポを少しだけ上げ、手刀で指していくと、
まんまと嵌ってくれました。
「1」「2」ときて思わず「3」と言っちゃいます。


「12」の次がポイントでした。
賢い子どもが「13」を「じゅうイカ」と言ってくれました。パチパチ。
「18」を「じゅうタコ」と言うでしょうか?
何度か間違いが起こり、「じゅうタコ」という言い方に笑いが起きました。
「30」から俄然、面白くなります。


「イカじゅう」と言わなければなりません。
「33」は、「イカイカ」で
「38」は、「イカタコ」です。 大爆笑。
どうにか、こうにか「40」に到達できました。
そこで、チャレンジを投げかけてみました。
T:1組は、1から40までカウントするのに何秒かかるでしょうか?
間違えたら、言い直してよいことにします。
そのタイムはノートに記録させました。機会があれば、後日再チャレンジをしてもらいます。
別バージョン(試み)
T.T.(team teaching)で
3つのクラスに関わっているので、基本的には同じ内容で授業します。
試みに「イカ・タコ」ではないバージョンで行ってみました。
初めは同じです。
張りのある声で1~10まで一つずつカウントさせていきました。
次は、「3の段の答え」を言わないことにします。
言わない代わりに手をポンと叩きます。1、2、と来たら「3」と言わずにポンです。


更に難易度を上げてみました。
3の段と5の段の答えを言わないで代わりに手を打つ、というもの。
子ども達は手こずっていました。難し過ぎると、楽しさも逓減していきます。
数字はいくつ?
ただ数を言っていくだけのゲームです。
順番が回ってくるので、子ども達は緊張したでしょう。
そこで気分を変えます。



数字を言っていくゲームをしました。ところで、
数字って いくつありますか?
すぐに挙手がありましたが、列指名していきます。
ごめんね、いろんな人に聞いてみたいから、と言って。
・分かりません。
・たくさん、あります。
そのうちに「無量大数」とか「無限」などというのが出てきて、
よく知っていますねとほめていると、すっと手が挙がりました。



数字は、1から始まって9までで9個。0を入れると全部で10個です。
数字はたくさんある
首を傾げている子どもがいます。
「数字は10個」?
そこで、発言を引き取って説明します。
T: 物の数を数えるとき、1から始めて1、2,3・・・と数えていきますね。
こういう数を自然数と言います。


T: 1~9の数に0を加えたものを
何と言いますか?
即座に「整数」という言葉が返ってきました。 整数 – Google 検索



0と1~9の10個の数字を組み合わせると、
無限に数の大きさを表すことができます。数字は10個・・・
と言っていいですか?
ダメですよねぇ。
数字はたくさんありますよね、と言って板書していきます。


T: アラビア数字は、
「算用数字」とも言います。
T:「漢数字」
というのもありますし、
「ローマ数字」というのも見たことがあるでしょう。
T: 今では使われなくなった数字もあります。
そういう意味では、「数字はたくさんある」という答えになるでしょうか。
数を当てる (予言マジック)
T: では、0~9の数字を使って「予言」をしてみます。
協力をしてくれる人、居ますか! ・・・ Aさんお願いします。
前に出て来てもらって、数字を5つ自由に選んでもらいます。
54980で5桁の数ができました。



これから筆算をしますが、計算する前に先生が答えを予言します。
子ども達には見えないようにして、
予言の答え「254978」を短冊に書き、伏せて黒板の隅に貼りました。
T: 足し算の筆算にします。また5桁の数を書いてもらいます。
・・・ Bさん、どうぞ。
Bさんは「70613」と書きました。



先生も参加して5桁の数を書きましょう。「29386」にします。
3人目に指名されたCさんは、同じ数字を使ってもOKということで、「88056」と書きました。
最後に
「おまじないです」と言いながら「11943」と書くと
筆算の式ができました。
これを数人を指名し、黒板でさせます。
他の子どもはノートに計算します。


このような、五桁のしかも五行の筆算は初めてだと思います。
が、答えは4人とも一致。「254978」になりました。


なぜ当たった?(予言の仕方)
予言は当たっているでしょうか?
T: では、予言の紙を見てみましょう。
当たっていたら、拍手。 先生の予言はすごい、ということです。(笑)
答えの出し方が場を盛り上げるポイントです。
少しずつ紙をずらし、左端の位から見せていきました。



254978。 おお! 見事予言どおりでした。 みなさん拍手!
・・・ところで、なぜ当てることができたのでしょうか?
子ども達は、
先生が2回も数を加えたところが怪しい、と言いました。
さすがですね、と言ってその数にラインを引きました。


T:じーっと見ているとあることに気が付きますよ。ヒントは、数字の「9」です。



分かりました。
例えば、
「70613」の3の下は「6」、「1」の下は「8」と言う風に
先生は上の数を見て、その下に足して「9」になるようにしています。
T: よくぞ見抜きました。拍手!
・・・では、どのようにして予言の数を求めたのでしょうか?
これは、難しかったようです。
説明しました。


T:99999は、10万から1引いた数です。
それを2回足していることになります。つまり・・・
初めにAさんが書いた54980に20万を足して、そこから2を引いた数を予言の数にしたのです。
おなかにすとんと落ちるように納得させるためには、
初めの数を変えて、
子ども達に予言させてやってみるとよかったと思います。
切ったら何本?
算数の「授業開き」についてお伝えしています。
最後にもう一つ、問題を出しました。
黒板を全て消して、
ぐねぐねとした1本の長い曲線を書きます。
子ども達は、何が始まるのだろうかと首を傾げて見ています。


T: 白い線は、1本の糸です。黄色い線ではさみで切っていくと、
糸は、何本になるでしょうか?
子ども達は、
人差し指で空書きのようにしながら数えだしました。
列指名で言わせていくと、
16本,17本,18本,19本・・・といくつか出てきました。
数人に出て来てもらって数えてもらいます。
1本、2本、3本・・・と声を出しながらなぞっていきます。
糸は18本になるようです。
「一言どうぞ」と感想を求めると、
「大変でした」、「数え間違いしそうになった」と返ってきました。



もっと楽に数えられたらいいですよね。
それを知ったら、算数っていいなぁと思えてきますよ。
こんな方法は、どうでしょうか?
と言いながら糸が切れるところで印をしていきました。
その印に番号を付けていきます。


T: 17か所で切れました。ということは、糸は何本ですか?
C1: 17本です。
C2: え? 18本でしょう?
簡単にして考えてみる
事象を簡単にして考えてみる。
このアプローチの仕方が解決に有効な場合があります。



ややこしい問題は、簡単にして考えるといいですよ。
先生は、「簡単化」と呼んでいます。


T:糸を1回切ると、2本になります。2回切ると糸は3本になり、3回切ると4本になります。
C1:糸の本数は、切った回数に1多くなるんだ。
T: すばらしい!
この関係を式にしてみましょう。切った回数をロ。本数を〇とすると・・・?
C2: ロ+1=〇 です。
授業は、ここまで。
終了時間となってしまいました。
このあと、
本当にその式で答えが出るのか、
各自、図をノートに書いて確かめるようにするとよかったと思います。
この日の算数の「授業開き」にどんな感想を持ったのか、
書いてもらうつもりでした。
※ 数を当てる(予言マジック)と切ったら何本? という活動は、
2011年~2015年において研数学館が開催する「算数・数学講演会」にて
講師の先生方が話されていたものです。
お陰様で楽しい算数の「授業開き」ができました。
この場を借りて感謝申し上げます。
研数学館のセミナーはこちら 一般財団法人 研数学館 (kensu.or.jp)