水溶液の性質を学ぶ授業のシナリオです。
6年理科の授業づくりの参考にしていただけたら、幸いです。
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・初出の物の説明 → Jump there
・調べる方法を問う → Jump there
・安全に関する指導 → Jump there
・実験前の説明 → Jump there
・準備しておくこと → Jump there
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学習用語「水溶液」とは?
授業は水溶液についてのおさらいから始まります。
第一声、子ども達に投げかけます。

水に何かが溶けています。どんなものがありますか?
順番に当てていくと、教室は一瞬にして緊張感に包まれます。
初めの子どもが「お茶」を挙げると果汁、コーヒー、紅茶が続き、
みそ汁、スープ。
絵の具、洗濯の水、石灰水なども出てきました。
それら全て黒板に書いていきます。

T:ずいぶん挙がりました。みんな「水溶液」ですよね。「うん!」と言ってみよう!
話の勢いにつられて、うっかりうなずいてしまった子どもがいます。
が、多くは、私の意図を見抜いているようで、引っかかりません。
T:全部じゃないってこと? では「水溶液」ってなに?
透明じゃないと水溶液とは言わない、というつぶやきがありました。
それが耳に入ったのか、「そうだった、そうだった」という空気になりますが、
念のため、やってみせます。
演示する
水の入った試験管を手に、問いかけます。
T:これに食塩を入れます。どうなりますか?
溶けて見えなくなります、と子ども達。
T:おお! ホントだ。 不思議だなぁ。
子ども達は「当たり前」という顔をしていますが、説明はできない現象です。
そこは触れず、次に行きます。
T:これは「食紅」と言います。お菓子作りに使われますね。
少量を入れて振り、窓際で透かして見せると「わーきれい」。
同様に「青い絵の具」と「片栗粉」も溶かし、4本の試験管を並べて投げかけます。

T:4つの液体、全て「水溶液」と言っていいでしょうか。
子ども達の言葉を元に以下のように整理します。これは教師の役目です。
「水溶液」は、ものが水に溶けた液体であること。それは、
1.透明である。
2.色がついていても「水溶液」という。
そして、水を蒸発させると溶けていたものが出てくる。
ここで、冒頭の活動に戻ります。
子ども達から出された液体は「水溶液」か、確認していきます。
その方法は、いくつかありますが、例えば・・・
子どもを二人指名します。
相談をしてもOKということにして、水溶液を〇で囲ませていきます。
二人ならプレッシャーも半分。
漫才のようなやりとりが見られるかもしれません。
ノートに書かせる
この時点まで、子ども達は話を聞く一方です。
そこで、作業を入れます。
作業を小刻みに入れるのがメリハリのある授業運営のコツです。
T:水溶液についておさらいをしました。ノートにまとめておきましょう。
箇条書きで書くよう指示します。
1分後、書いたことを読ませ板書します。

参考
溶けるとは、ある物質の分子が、液体中に均一に拡散すること
10の7乗分の1cmの大きさまで小さくなること
1/10000000 cm
光が通過できるようになり、着色しても透明になる
溶けているものは何か?
これより本単元の内容に入っていきます。
じゃ~ん。
効果音を入れながらビーカー(もしくは、画像を)提示します。
4つのビーカーには、水のように無色透明な液体が入っています。
T:4つとも同じに見えますが、それぞれ別の水溶液が入っています。共通点は何でしょう?
即「どれも無色透明。だから水溶液です。」と言っちゃいます。
考えさせる場面ではありません。
そして、水溶液の名前を伝えます。


この4つは、食塩水、薄い塩酸、薄いアンモニア水、炭酸水です。
そうして問題を板書します。
問題 4つの水溶液には、何がとけているのだろうか。
ノートに問題を写した子ども達は、ここから探求活動へと向かっていきます、
なんてことには絶対になりません。
大多数の子どもは、一部を除き、引っ掛かるものを感じています。
分からない言葉があるのです。
それについての説明が必要です。
初出の物の説明をする
まず「塩酸」から。

市販されている現物(瓶)を見せます。 ※容器のみ
T:これが塩酸です。劇物といって人体に有害で危険です。
濃度が高いと白い煙が上がって、つんとした匂いが立ち込めます。
実験で使う場合は、薄めて使います。
これ、実は皆さんの体の中にもあるんですよ。
ひょっとして、胃酸のこと? という子どもがいたら大いに褒めます。
次に「アンモニア水」を見せます。
T:これが「アンモニア水」。200円くらいで売ってます。
みなさんの家にもあるかもしれません。刺激臭がします。
これも薄めて使います。
T:食塩水と炭酸水については、説明しなくてもいいですね。
※ここでは容器のみを見せるに留(とど)めていますが、希釈していない塩酸を持ってきて、
蓋をとった瞬間白煙が立ち上る様を見せると劇薬物の認知度が高められます。
万一ということがあるので、止めます。
調べる方法を問う
問題を出すとその答えをすぐに言ってしまう子どもがいます。

どちらも気体が溶けているんだよ。塩酸は「塩化水素」、アンモニア水は「アンモニア」さ。
よく知っているね、とにこにこ顔で返します。
彼らに持っている知識を披露してもらって構いません。
それを聞いて初めて知る子ども達にとっては、プレ知識を獲得する場面になります。
問題は、何が溶けているのかでした。
もはや、それを予想させても意味がありません。問いを変えます。
調べる方法を話し合うことにします。
T:何が溶けているのかは、ひとまず置いといて・・・
どのビーカーが何の水溶液か、どうやって調べたらいいでしょうか。
発問と作業指示はセットです。即、続けます。
T:ノートに「調べる方法」を書いてごらん。
子ども達が取組んでいる中、机間巡視しながら独り言ちます。
T:Oh! 〇〇さんは、箇条書きで書いているねー。
T:〇△さんは4つも書いたの? すごーい。
こうすると、教室が引き締まります。
1分後、言わせます。
それを過ぎると、たいていの場合、授業はダレ始めます。
話し合い活動
ノートに書いたことを発表させます。
自信のない人からどうぞ、とやります。
この一言は、子ども達にはプレッシャーになります。
発言しようとしない子は、自信があるという意味になりますから。
C1:まず、見た目で分かります。
泡がついているので、炭酸水だと分かります。

C2:臭いで分かります。
先生の話では臭いのするのがあるので、臭わないものは食塩水です。
すかさず、手が挙がりました。
C3:すごく薄めてあったら臭わないかもしれないよ。

舐めるのはどう? しょっぱかったら食塩水だよ。
C4:じゃあ、全部の味を見ていくわけ? 危なくね?
問い返しを入れる
別な方法が出てきました。水溶液に働きかけるものです。
C5:熱して蒸発させる方法があります。食塩水なら、食塩が出てきます。
C6:石灰水も調べる方法になるよ。
炭酸水の泡は「二酸化炭素」だから、入れれば白く濁ります。
何かを「入れる」という発想から、金属を入れてみるという考えも出てきました。
なぜそう考えたのか、問い返す。これ、結構授業がオモシロくなります。
T:C7さん、なんでそんなことを思い付いたの?
C7:家族で温泉に行ったとき、そのお湯が旅館の電気製品をダメにしちゃうと聞いたんです。
指輪をしたまま入ると色が変わっちゃう温泉もあるってママが言ってたし。
C9:海の近くでは錆びやすいと聞いたことがあります。
鉄を入れてみるのもいいかも。
そう言えば、とつぶやいた子どもがいるので、続きを話すよう促します。
C10:自由研究でやったんだけど、
ハーブティにレモン汁を入れると色が変わるんだよ。
これ、使えないかなぁ。

以上は、実際の授業場面ではありません。
こんな話し合い活動になるといいのですが。
様々発想しても・・・
実際の授業では、「リトマス紙」や「BTB液」という試薬が挙がりました。
予習していたのでしょう。
これは来週以降扱います楽しみだね、と返しておきます。
調べる方法は、電気を通す、温める・冷やすなどへも広がり、様々出てきました。
子ども達の発想を生かし、自主的な学びを展開させたいところではありますが、
そのような授業にしていく力量はありません。
そもそも時間がありません。
では、なぜ方法を考えさせたのか?
アプローチの仕方を考えることにねらいを設定していた、ということです。
T:調べる方法がいくつも出されました。皆さん、すばらしいです。
でも全部は試せないので、いくつかの方法に絞って調べていきましょう。
その前に・・・。
と言いながら画像を提示します。
授業は、授業者主導で実験を安全に行うための指導へと移ります。
安全に関する指導
教科書の巻末に、器具の使い方や安全に関するページがあります。
これをプロジェクターで映し、周知をはかります。
この指導には数十分を要します。
1.安全めがねをかける。
うっとおしくてはずしてしまう子もいます。


2.換気する。
換気扇を回すのは、教師の仕事です。
3.水溶液はさわらない、舐めない。
手に付いた場合、目に入った場合の対処を教えます。


4.水溶液を混ぜない。
実験が早く済んでしまうと、やりだす子どもがいます。
探求心旺盛? 気持ちは分かります。
以上のまとめとして「この実験の3ない」を唱和させます。
なめない・まぜない・さわらない
片づけ、その他
(1)残った薬品、水溶液は分別して廃液タンクに捨てる。
(2)試験管の洗い方は、実際にやってみせます。
(ブラシで底を突き、割ってしまいます。)


(3)「やけど」をしない方法を教える。
・直接触らない。
・熱した所の遠くから瞬間的に触って、確かめる。
これも実際にやってみせます。
(4)臭いは、仰ぐようにして嗅ぐ


(5)試験管にラベルを貼ること。
(ラベルは教師が作り、かごに入れておく。貼る位置を指示する。)
水溶液を入れる量も指導する。
教科書には1/3以下とあるが、1/5程度が適量。
(6)使用した器具類の返し方
実験器具は事前に全てかごに入れておきます。これも教師の仕事。
子ども達は、番号のついたものを自班へ持って行き、返却もかごごとです。

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