「引き出し」とは、多方面に渡る知識や技能のこと。
そうした引き出しをいくつもお持ちの事と思います。
多忙な中にあっても、なお授業力をUPさせるべく自己研修に取組まれていることと思います。
有名な詩文・古文の暗唱についてはどうでしょう。
遅まきながら、100篇の詩文の暗唱にチャレンジしました。
これも私の「引き出し」になっています。
この記事が先生方のお役に立ちましたら幸いです。
和歌を詠んで始める
教師は役者になって授業をするときがあります。
ある人物になって、演ずるのです。
始業のチャイムが鳴ったと同時に、
「この世をば ~ 我が世とぞ思ふ 望月の~ かけたることも なしと思へば~」とやります。
ご存じ、道長の「望月の歌」です。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/03/uta_yomu_2.jpg)
子ども達は、目をぱちくり。
授業の開始早々、先生が和歌の朗詠をやり出したのですから。
子ども達が呆気にとられている中、
平安京のやんごとなき空気を一層醸しつつもう一度、詠みます。
説明に入ります。
歌の意味を簡単に話します。
道長がこの歌を詠んだ背景も説明します。
寝殿造りの画像を大きく映し出して、投げかけます。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/couple_egao_bnessman-2-150x150.jpg)
この歌を詠んだ道長とは、どんな人だと思いますか?
お隣さんと1分間、おしゃべりしてください。 ハイ、どうぞ。
時間になりました。
順番に指していきます。
どんな話が出たか言ってもらい、これから調べたいことを整理していきます。
(以下、略)
6年生社会「貴族のくらし」、単元の導入部分の授業をシミュレートしてみました。
この授業をするにあたっては、「望月の歌」を暗唱できるようにしておきます。
有名な歌ですから、あえて準備をするまでもないことかもしれません。
暗唱への取組み
実は、暗唱が苦手でした。
時間ばかりかかって、なかなか覚えられないのです。
暗唱の仕方を学校で教えてもらっていたら、少しは楽に暗唱できたかもしれません。
ある研究会で暗唱に取組んでいる学校を知りました。
卒業までに100篇を暗唱する、というのが学校目標だそうでした。
これをクリアさせるのは、大変なことです。
1年間に15~20篇くらいの暗唱に取組むことになります。
全学年の先生でことに当たらなければこの目標達成は成りません。
その学校に勤務する先生方は、すでに100篇の暗唱をクリアしているのでしょうか。
そのような人は、ほとんどいないと思いますから、
子どもと一緒になって挑戦していくスタンスかもしれません。
それがどれほど大変な事か、自分もチャレンジしてみようと思い立ちました。
これは教師としての「引き出し」を増やすことにもなると思いました。
その取組みの詳細は、関連記事をご覧ください。
暗唱という「引き出し」
この「望月の歌」を覚えさせたい、とします。
人名もその歌もテストに出ますし、知識として身につけさせておきたい事柄です。
そのとき、「暗唱しましょう」などという直球の指示を出してはいけません。
子ども任せにすると課題に対する成果はまちまちになります。
そもそも、子ども達は「詩文を暗唱する」というスキルをもっていません。
国語の教科書に「竹取物語」や「平家物語」などが載っていますが、
それらは、音読教材です。
暗唱することを目標(目的)にはしていません。
が、繰り返して音読するうちに子ども達は覚えてしまいます。
継続して取り組む中で、暗唱できるようになっていきます。
「望月の歌」をこの日の社会科の授業の中で覚えさせるには、ノウハウがあります。
「変化のある繰り返し」という授業技術です。
私は、教員向けセミナーに参加して知りました。
すでにご存じの方も多い、と思われます。
この方法で、「詩文・古文の暗唱100篇」という「引き出し」を持つに至りました。
以下、紹介します。
暗唱の仕方
詩文の暗唱100篇の達成には、数年かかりました。
※関連記事 暗唱できました。 詩文100のリスト | Ri-せんのお役立ち情報 (ri-sen.com)
暗唱は、音読の繰返しと言われています。
ネット上にその方法がいくつも上がっています。
しかしながら、実際のところ、
声に出して読むだけではなかなか覚えられません。
以下のようにしました。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/03/izumi-waku-ao.jpg)
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/03/izumi-waku-ao.jpg)
現在、和泉式部の和歌に取組み中ですので、それを例にします。
まず、覚えたい歌の全体を頭に入れます。
翌日になると、かけらも思い出せないのですが、
取りあえず、一度諳んじることができる状態にします。
2日目。
一部を隠して言えるようにします。(右図)
1. 1~2文字程度を隠す。
言えたら、隠す部分を少しずつ増やしていく。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/02/izumi-waku-ao-kaku1.jpg)
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2.思い出せなかったら、すぐに見る。
3.歌の意味を調べる。
情景を描いておくと言葉が浮かびやすくなる。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/02/izumiao-kaku223-1024x403.jpg)
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「もの思へば 沢のほたるもわが身より あくがれいづる 魂かとぞ見る」 和泉式部
好きになった方がいたの。
でも、今の夫の気持ちには応えなければなりません。どうしましょう。
そう思って神社にお参りにきたら、あら、沢にホタルが。
恋に悩むわたしの体からさまよい出た魂のように見えるわ。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/02/uta_yomu_woman-hotaru.jpg)
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と、いうように。
4.隠し方を変えてみる。
行の頭を隠したり、
最後の部分を隠したりして諳んじてみる。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/02/izumi-ao-1024x438.jpg)
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5.書いてみる。
決め手は「書くこと」
暗唱のこつは繰り返し音読、と言われます。
たぶん、それは文字情報を映像として記憶野に焼き付けていく作業のように思われます。
例えば、
音声情報の「いずみしきぶ」を書くときは4つの漢字になります。
3文字の「泉式部」でもなければ「和泉色部」でもありません。
「和泉式部」です。
そのように書けるのは、映像となっている記憶に基づくからだと思われます。
暗唱したことが原文の通りに書けること。
これが暗唱を確かなものにする決め手です。
最後のステップが「書く」となります。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2024/03/izuku223.jpg)
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5.暗唱した詩文を書いてみる。
筆ペンを使います。
毛筆の上達は、それをしている時間に比例します。
臨書は欠かせませんが、筆遣いは上手くなります。
これも教師の「引き出し」になっていきます。
小説の書き出しも暗唱していますが、
書くことによって句読点の打ち方も注意するようになります。
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