この記事の元は、初任者研修の指導資料です。
リメイクし、発信することにしました。
現場の先生方の、授業づくり等の参考になりましたら、幸いです。
はじめに
授業力がない。
準備をある程度しておかなければ子どもの前に立てなかった。
土日は、授業準備で明け暮れた。
1週間に20数コマ分を用意しなくちゃいけない。
授業を商品に例えれば、
用意するその20数個は、すべて新商品で、
しかも、お客様のニーズに合うようにと求められている。
一日が終われば、棚は空になり、
また新しく商品をつくらねばならない。
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やってもやっても準備不足。
うまくいかない。
授業をするたびに敗北感にうなだれていた。
時が経って、
或る日、ふと気が付いた。
自分自身が授業時間を楽しむことだ。
以来、そのように取組み続けたら、
いつのまにか自分の授業スタイルが出来ているように感じられてきた。
ある年からは
算数授業だけを持つようになった。
これが、なかなかいい。
同じ内容を3つのクラスでするから修正ができて、
授業を磨くことができた。
教科書が読めるようにもなっていった。
どういうことか。
設問の意図が見えるし、
なぜその数を使っているのかも分かる。
挿し絵や図を授業でどう扱えばいいのか、
その指示の言葉もあれこれ浮かべられるようになった。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/09/textbook2_sansu.png)
授業をすべく教室に入ったとき、
子ども達が算数の時間を楽しみにして待っていたことが感じられて、
笑みがこぼれてしまう。
先生、なんでニコニコしているの?
と不思議そうな表情で聞いてくる子がいる。
この空気がうれしいのだ。
説明できない。
それでも、
イマイチな授業行為をやってしまうことはしばしばだ。
自己評価で、80点台の授業ならよしとしよう。
・・・などと思いながら、
3階の奥にある教室、NAK級の算数に行った。
「早退」したくなかった理由
この日も、
T.T. (team teaching)のT1として授業を進めることになっていた。
教室に入り、授業を始めようとすると担任が、近づいてきた。
なんだろう?
山〇君が早退するので電話をしてきます。
そう告げて下へ降りて行かれた。
その山〇君へ目をやると、
早退となっているのに、どうしたことか帰り支度を始めないで
じっと自席で座っている。
ちょっといいかな、
と額にふれてみると、熱い。
尋常な体温ではない。9度近くまで出ているようだ。
帰らないの?
そう話しかけたが無言。
そのうち、彼の目から涙がぽろぽろ出てきた。
(熱で辛いんだな。)
と思ったものの、姿勢はしゃんとしている。
何か不本意なことがあるらしい。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/09/school_randoseru_black_open_full.png)
家庭への連絡をして担任が戻ってきた。
数人の子どもに帰りの支度を手伝わせ、彼は促されて教室から出て行った。
週が明けて、
ぱったり廊下で山○君に会った。
お、熱はもう下がったのかい?
当たり前だ。
現にこうして登校しているのだし、元気なのは見れば分かる。
ちょっと聞きたくなったのだ。
あのとき、どうしてすぐ帰らなかったの?
だって、算数やりたかったんだもん。
彼から返ってきたその言葉に一瞬、時が止まったように思えた。
あの日、
帰らないの、という私の問いかけに、彼は涙で答えた。
受けたかったのだ、自分の算数の授業を。
授業1コマと言えど、あだや疎かにしてはならない。
私はこのエピソードをいつまでも大切にしたいと思う。 (平成18年度の週案「指導記録」より)
子ども達が喜ぶような授業、
力をつけてくれる授業は、授業者も楽しい。
そのためには、授業の品質をあげることが鍵だと思うようになった。