「電気と私たちの生活」 その授業シナリオです。
現代の私たちの生活は理科によって支えられています。
そのことが子ども達一人一人に実感されてくる授業にしたいと思います。
※見出しに<第1時>、<第2時>等とありますが、
1コマ45分に収まるようにはなっていません。ご承知おきください。
<第1時の授業>
授業の始まる前に単元名を板書します。
「電気と私たちの生活」と書きます。
え、始まったの?
怪訝な面持ちで子ども達が席に着き出します。
T:単元名を書きましょう。
書き終えた子どもが顔をあげると写真が映し出されています。
ダムの写真です。
※授業では、プロジェクターを多用します。授業前にセッティングしておきます。
T:このダムの名前、皆さん分かりますよね?
(え? という顔の子。教科書にあります。)
黒部ダムです。60年くらい前に造られました。
とても大きいですよー。
T:アーチになっている所はおよそ500m。高さは182mです。
これ、なぜ造ったんでしょうか?

前列の子どもから当てていきます。
こうすると、教室は一瞬にして緊張感に包まれます。
最初の子どもはいきなり指されてフリーズ。言葉を発しません。
ちょっと考える時間がほしいですよね、とフォロー。
次の子どもを指します。
水の確保とか、観光とか、洪水を防ぐためとかいろいろ答えてくれますが、
「電気をつくるため」が出たら即、次に進みます。
教師主導で進める

電力不足がおきていたのです。それでダムと発電所を造ったのです。
とても大変な工事で、その様子は「黒部の太陽」という映画になっています。
ここで注意。
「電力不足」と言われても、子ども達はハテナです。実はよく分かっていません。
授業で体験を話す
電力不足とは、実際どういうことなのか。
理科学習の周辺事項ですので、さっさと説明してしまいます。
もちろん、答える子どもがいれば活躍させます。

10年くらい前、電気が足りないということが起きました。2011年の東関東大震災です。
発電所がストップしちゃいました。
それで、電気が使える地域や時間が決められました。これを計画停電と言います。
先生の住んでいる所は、夜の10時になると停電しました。家の中は真っ暗になります。
当然テレビも点かないし、本も読めません。何にもできません。
だからさっさと寝てしまいました。そんな生活が2週間ほど続きました。
話を続けます。

今から70年前のことです。 関西地方が電力不足になっていました。
休電日といって電気が停まってしまう日が週に3日もあったそうです。原因は、地震ではありません。
さあ、問題です。なぜ電気不足が起きたのでしょうか?
考えさせてもいいのですが、進めてしまいます。
電力不足は、家電が普及したから
画像を提示し、どういうことを表している図か問います。
子ども達: 昔の道具が電気製品に変わったという図です。
昔はなかったけど、発明された物があります。
それで便利になったことが分かります。
T: 多くの家庭で電気製品を使うようになりました。
これを家電の普及と言います。
こうした変化が70年前頃から起きました。


なるほどー。それでたくさん電気が必要になったんだー。
タービンって何

電力不足を解消するために黒部ダムが造られました。水力発電所は地下に造られています。
さて、その電気はどのようにして作っているのでしょうか。
タービンと発電機の写真を一つずつ順に見せます。
初めにタービンから。
教科書の写真に指を置かせ、問います。
聞いたことがある言葉でも説明できないことがあるからです。
タービンって何? ・・・水車のように羽がついて回転するもの。
これ自体は、電気をつくっていない。
発電機って? ・・・言葉の通り。電気をつくる機械。
このような水力発電所が国内では2000以上あることを伝えます。
3択クイズにすると授業の雰囲気が変わっていいかもしれません。
日本の水力発電の数は? – Google 検索
水力以外の発電方法があります。
物知りな子どもからは、バイオマス発電や波力発電などが挙がります。

ここで解説。
以下、横道に逸れていくような展開になりますが、そうしているのは、
授業者の思いがあるからです。
学習のねらい
卒業を間近に控えている6年生。
未だ「世の中」の動きや仕組みには関心が大してありません。ニュースも見ませんし、新聞も。
そんな子ども達に、スイッチを入れたいと思うのです。
世の中の動きに目を向けさせたいわけです。
例えば、SDGs。
持続可能な社会に向けた取組みは、大人達だけが考え行っていくものではありません。
自分達(子ども)にも求められている問題であることに気づかせていく、
授業にそういう思いも込めたいと思うのです。
この単元の名称「電気と私たちの生活」はまさにそういうところからつけられていると考えます。
授業では雑学も
ここまでの板書は、右の挿絵参照。
授業は「電気をつくる」へと進めていきます。
内容は3つ。
・発電量の多い発電方法は?
・発電 事始め(雑学)
・結局、発電機で発電していること

4つの発電方法の図を見せながら、発問をします。

現在の日本では、どの方法がより多く電気をつくっているでしょうか?
火力です。 およそ7割が火力。 石炭やLNGを燃やしています。
火力発電の燃料の割合は? – Google 検索
LNGによる発電は石炭よりクリーン、
供給が安定しているとのことでしたが、世界情勢(戦争)の影響を受けて高騰。
2021年10月以降は石炭に傾いています。
我が国のエネルギー事情にさらりと触れます。

ここから、少々豆知識。

日本で一番最初に取り入れられたのは どの発電方法でしょう?
子ども達は「水力発電」と予想しましたが、火力発電です。
1887年(明治20)南茅場町に設置されたのが日本最初の火力発電所。
石炭火力でした。
日本初 発電 – Google 検索
ちなみに、水力発電の始まりは1891年(京都)です。
日本初 水力発電 – Google 検索
雑学的な話はここまで。
いよいよ、6年生の内容に入っていきます。
前学年の復習を入れる

主な発電の方法に 火力、水力、風力がありますが、
この3つの発電の仕方の共通点は、何でしょうか?
と投げかけてから「教科書は強い味方ですよねぇ」とつぶやきます。
これは、教科書を見ると分かりますよ、というなぞかけです。
火力、水力、風力の3つに共通しているのは、いずれも発電機を使っている点でした。
そこで、発電機に目を向けていきます。
「1.電気をつくる」とタイトルを板書。
続けて「発電機」と書いて投げかけます。

発電機は、あるものと仕組みが同じなのです。 それは、何でしょう?

モーターです。
モーターは磁石と電磁石(コイル)でできています。5年生で習いました。


よく分かったね、すごいすごい。
ところで電磁石とはどういうものか、3つくらい言えますよね?
授業のテクニックを紹介しましょう。
忘れていい、と言う
授業には心地よい緊張感がほどよく漂っているといい、と考えています。
そのための一方法です。
まず、「全員起立」と指示します。
子ども達が立ったら問題を出し、「答えが言える人は、黙って座りましょう」とするのです。
忘れてしまった子どもは、座れません。
ここで気を付けるのは、立ちっぱなしにさせてはいけないということです。
即座に、明るく言います。
「人間は忘れるんです。忘れていいんです。答えを聞けば思い出しますよ。
さあ、座わりましょう。」と。
この時は、当ててという顔をしている子どもを指しました。
授業の進行をスムーズにするためです。

電流が流れたとき、磁石になるのが電磁石です。

あとの2つを言っていいですか? 一つは、電流の向きを変えると極が変わること。
もう一つは、電流を強くすると引き付ける力が大きくなることです。
モーターと発電機の仕組みが同じことをおさえたら、次。
同じ発想ができれば天才・・・かも

モーターを見て、ある人たちはすごいことに気が付きました。それは、何でしょうか?
みなさんも、同じように発想ができれば天才! ・・・かもしれません。
数人が、気が付きました。

モーターを回転させれば、その逆で電気が発生するのでは?

すばらしい! 〇〇さんは天才!! ・・・かもしれません。

子ども達をほめていくと教室が明るくなります。
話が続きました。
これから手を動かす活動に入っていきます。

では、これから電気を作ってみましょう。 ・・・簡単ですよね。
頭を指しながら、
「ここを使えばすぐ電気ができますよね」と言いつつ、下敷きを出します。
ぽかん、としている子ども達。
T:お、髪の毛がくっつきました。やったことあるでしょ。
これは静電気と言われているもので、この方法でつくるのではありません。
モーターを使って電気を作るのです。
道具を取り出し、演示を始めます。

現象を表現させる
モーターのシャフト(軸)に棒を当て、それを勢いよく引くと軸が回転。
豆電球がピカッと光りました。
子ども達「ん?」という顔。何度かやって見せます。
その見た様子を言葉で表現させます。
最初に指された子どもは、「光った。」と言いました。

「次の人は、理科の言葉を入れて言えるといいですね」と注文すると
「電流が流れたので、豆電球が光りました。」と言いました。すごい、すごい!
「もう少し言葉を足すといいんだがなぁ」と煽ると

モーターの軸を回転させると、電流が流れて豆電球が一瞬だけ光った。
聞きっぱなしにさせてはいけません。
T:とてもよかったですよね。みんなも○〇さんの発言を参考にして書いておきましょう。
全員に成功体験させる
台座にモーターと豆電球を取り付けた実験器具は、2人に1台になるように準備しておきます。
一人一人にさせます。
コツを教えて回ります。
上手くいかない子どもにはやってみせるのが一番です。
5,6分程度で切り上げ回収します。
※手元に不要となった物を残しておくのはいけません。いじり出します。

皆さん、実験大成功ですね! モーターを使って電気がつくれました。でも・・・
使えませんねー、この電気。豆電球は一瞬で消えちゃいます。
ずっと光らせるには、どうしたらいいのでしょうか?
「回し続ければいいですよね。でも、どうしましょう・・・」
と言いながら、机の下から道具を取り出します。
T:じゃ~ん。これは、手回し発電機といいます。
T:ハンドルを回すと中のモーターが回り、電気がつくれます。
電気をつくることを発電と言います。
「発電!」と言いましょう、さんハイ。
授業中、時折子ども達に声を出させるようにします。
手回し発電機の使い方は教科書で確かめます。

子どもに言わせていく
次は手回し発電機の特徴です。子ども達に言わせます。

手回し発電機の特徴は何だと思いますか? 豆電球を光らせるなら、乾電池でもできますよね。
C1:ハンドルを回す速さで、電流の大きさが変わると思うよ。
C2:逆に回すと、電流の向きが変わるんじゃないかな。
ここでは触れませんが、子ども達がどうしてそう思ったのか言わせるようにしています。
お待ちかね、手回し発電機を使っての実験となります。
と、思いきや…
考察を書かせる
結果を書く表を作らせます。
実験をしながら記録するようにします。
おそく回す | ふつう | 速く回す | |
豆 電 球 | |||
プロペラ付 モーター |

※モーターにプロペラをつけるのは、回転の速さを捉えやすくするためです。
結果が書けたら考察も書くよう指示します。
分かったこと、思ったことを自分の言葉で書くのです。
ノートを提出させて授業終了。
ノート回収は、学習状況を把握する一つとしてしばしば行います。
次時の授業を修正する材料ともなります。
この実験結果の共有は、次時に行います。
<第2時の授業>
授業の初めは、必ず前時の振り返りから始めます。
教師主導でスピーディーに行います。
復習のさせ方には様々がありますが、この時は演示をしながら。
手回し発電機を取り出しハンドルを回します。
豆電球の明るさに着目させながら速くしていきます。
T:豆電球の明るさが変わりました。これはどういうこと?
回転させる速さで電流の大きさが変わるため、
と言わせます。

次は、おもちゃの車を取り出します。
男の子が、身を乗り出してきます。
T:ハンドルを逆に回すと・・・バックしました。
どういうこと?
電流の向きが変わったため、と言えればOK。

演示の3つ目はLED(発光ダイオード)。子ども達にとって初出の実験器具です。
LEDとコンデンサー

これは「発光ダイオード」と言います。LEDの訳です。 LEDはよく耳にしますよね。
T: ハンドルの回転を止めると、あら? LEDは光らなくなりました。 なぜでしょう?
これは簡単。
回さないと電気はつくられないから電流は流れません。

ハンドルを回すのを止めたのに、それでもLEDがしばらく光っていたら「あれ?」と思いますよね。
回路にコンデンサーをつけたものを取り出し、やってみせます。
子ども達の多くは、取り替えたことに気づかないようです。

ハンドルを回していないのに、LEDがずっと点いている! 黒い部品は何ですか?
T:よく気が付きましたね。
これは、コンデンサーという電気部品です。
どんな役割があると思いますか?

ハンドルを回した時の電気が、貯められているのかもしれない、と子ども達。
ではこれを使って実験してみましょう、と投げかけます。
条件を揃えるということ
お待ちかねの実験へとなります。
T:コンデンサーに貯めた電気を使って実験をします。
回路につなぐものは豆電球。次にLED、最後はモーターとします。
どんな違いがでるでしょうか。
点いている(作動している)時間が違うのではないかと子ども達。
そこで、投げかけます。

C1:LEDは電気をあまり使わないので、
しばらく点いていると思います。
C2:豆電球は熱くなので、
電気をたくさん使いそう。
C3:モーターも電気を使いそうだよ。
結果の予想したら、コンデンサーの使い方(電気の貯め方)をおさえます。
・ハンドルは同じ速さで回すこと。(例えば、1秒/1回転)
・時間(回数)を決めて回すこと。(例えば、1分間 or 60回)
実験をする際に条件を揃えて行うのは初めてではありません。
それを確認します。

なぜ、回す速さや時間(もしくは回数)を決めておくのでしょう?
以下のような内容を期待します。
・実験は、条件をはっきりさせて行います。
・貯めた電気の量を同じにしないと比較できない。
・条件を揃えないと、結果がその都度違ったものになってしまう。
実験は交代しながら
実験班は4人組。役割分担をさせて実験開始です。 ※豆電球は2.5V 200mA使用。
終了した班が半分くらいになったら切り上げます。
※すべての班が終了するのを待ってはいけません。(遊びだします。)
続いて結果を共有する時間にします。教師主導です。
何人かに発表させます。

LEDが一番長く点いていて1分以上でした。 豆電球はすぐに消えてしまいました。

モーターは豆電球よりも長く回っていました。
これらの発言を得て結果を次のように板書しました。
LED > モーター > 豆電球
板書を終え、投げかけます。

みなさん、ここで疑問に思ったことがありますよね?
ほとんどがキョトンとしましたが、何人かが反応しだしました。
使える時間が違うのはなぜか?
ものによって使う電気の量が違っているようだ、ということです。
これらの発言を受けて、投げかけます。
使う電気の量を調べるにはどうするか?
電流計で調べます、と言わせたいところです。
回路を流れる電流の大きさを計ることは、
前学年でしています。

電流の大きさを調べる

豆電球とLED、それぞれの電気の使われ方を調べてみましょう。
念のため、2点を確認します。
T:そろえる条件は?
コンデンサーにためる電気の量。
すなわち手回し発電機を回す速さと回数。
T:調べることは?
それぞれの電流の大きさ。
光り方を観察。光っている時間も計る。
回路図を提示し、ノートに写させます。
※図のように接続していないグループがあります。机間巡視(指導)が必要です。
次に測定の仕方を指導します。
T:スイッチを入れて30秒後の電流を計ります。
そのとき、光っているかも見ます。
60秒後も同じように計ります。

電流計の使い方を指導します。
・初めマイナス(ー)の端子は5Aにつなぐこと。
・針の振れ方が小さく読み取れない場合は、500mA → 50mAと変えていくこと。
めもりの読み方も練習します。
※電流計の指導は、小学校段階では軽く扱う程度でOKのようですが、教えます。
実験用の器具は2人に1つ用意する
結果を書きこむ表を作らせます。
時 間 | 豆電球が 光っているか | 豆電球の電流 | LEDが 光っているか | LEDの電流 |
30 秒後 | mA | mA | ||
60 秒後 | mA | mA |
実験は2人組で行います。
一人は、コンデンサーに電気をため、回路をつくります。電流計も読みます。
もう一人はバディの操作を見守ります。時計係をします。
豆電球からLEDに変えるとき役割交代をします。

このように、器具を操作する体験は全員にさせます。
そのため、実験器具は(1学級36人として)18セット。 +α 用意しておきます。
※これらの準備は、事前に行っておきます。
必要な器具をすべてかごに入れておくのです。
一つ一つ取りに来させると時間がかかり、また混乱もします。
結果の共有からまとめへ
実験結果を3組くらいに言わせます。
・LEDの方が点いている時間は2分以上でした。
電流は〇mAで豆電球に比べて小さかったです。
・豆電球は1分も経たないで消えてしまいました。
電流は大きくて〇〇mAでした。時間が経つにつれて電流も小さくなっていきました。

電気が使える時間が違うのは、なぜか。「電気の量」という言葉を使って書いてみよう。
学習のまとめをさせるときは、キーワードを示して書かせます。
・LEDは、豆電球に比べて使う「電気の量」が少ない。
・LEDは、使う「電気の量」が少ないので、長い時間点燈している。
・使う「電気の量」は物によって異なる。
書き終えた子どもにノートを読んでもらいます。(数人)
授業は終盤に入りました。
T:今日は、コンデンサーを使った実験をしました。
ところで、この機械はなんでしょうか?
そう、AEDです。保健室にありますね。
強い電気が流れることで、心臓を正常な状態に戻す、
そういう機器です。

T:スイッチを押すと電気を貯め始めます。
それをしているのが、そう、コンデンサーです。
電気ショックを与えるだけエネルギーが溜まったとき、準備OK。
機械が発する音声案内に従って救命活動をすることができます。
正常な人に対して行ったらどうなると思いますか?
電気ショックは作動しません。
機械が心臓の動きを調べて判断してくれます。
すぐれものですよね。
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