電気と私たちの生活 その授業シナリオです。
私たちの生活は理科によって支えられています。
そのことが子ども達一人一人に実感されてくる授業にしたいと思います。
電気と私たちの生活
単元の第1時の授業です。
授業の始まる前に教室に入り、板書。
「電気と私たちの生活」と書きます。
さっそく指示します。

単元名を書きましょう。
子どもがノートから顔をあげるとスクリーンに次の映像が映し出されています。


黒部ダムです。
60年近く前に造られました。
なぜ、造ったのでしょうか?
C:電気をつくるため、です。
それはそうです。補足します。
T:電気が足りなかったのです。つまり電力不足。
それを解消するためにダムと発電所を造りました。
その様子は「黒部の太陽」という映画になっています。
C:電力不足?
子ども達はよく分かりません。
電力不足とは実際、どういう状況なのか?
そして、そもそもなぜ電力不足に陥ったのか?
ざっくりと説明してしまいます。

2011年の東関東大震災の直後、計画停電が行われました。
電気が使える地域や時間が決められたのです。
この生活が2週間ほど続きました。
大きな工場は止まってしまいました。
夜の10時くらいから停電になるので、家は真っ暗でした。
今から70年前の話ですが、
関西地方は電力不足になっていました。
週3日は休電日。停電は毎日のよう。
工場も週2日は電気が止まっていたそうです。
では、なぜ電気不足が起きたのでしょうか?
子ども達に考えさせたいところではあります。
が、理科授業から離れるので、こちらで話を進めてしまいます。
画像を提示します。

C:昔の道具だ。
C:3年生で勉強したよ。
C:それが家電になっている。
T:今から70年前、多くの家で
電気製品を使うようになりました。
家電の普及です。

それでたくさんの電気が必要になったんだね。
理科学習を生活とからませる

この黒部ダムには水力発電所が造られています。
地下にあるので地上からは見えません。
水の勢いでタービンを回して発電機で電気を作っています。
教科書に掲載されているタービンと発電機の写真を見せ、
日本には水力発電所が1700ほどあることを補足します。(資源エネルギー庁 2019年資料)
水力以外にも発電方法があります。
これを子ども達に言わせていきます。
物知りな子どももいて、バイオマス発電や波力発電なども挙がりました。

すでにお気づきかと思いますが、依然、おまけのような授業をしています。
指導内容を膨らませすぎているのかもしれません。
このような展開にしているのは、わけがあります。
卒業を控えた6年生の子ども達に
世の中の動きにも目を向けさせたいと思っているのです。
子ども達の多くは時事問題についてほとんど知らないようです。
世の中の動きについて興味や関心が未だ芽生えていないのでしょう。
そんな6年生にスイッチを入れたいと思うのです。
理科は、私たちのくらしの変化と大きく関わっています。
この単元の授業が進むほどその思いを深めると思います。
持続可能な社会に向けた取組みが子ども達一人一人にも求められている、
そんなことに気づかせていくのも授業だと思うのです。

ここまでの板書はこんな感じ。
さらに授業を進めます。

現在の日本では、どの発電方法がより多く電気をつくっているでしょうか?

正解は、火力です。
八割が火力です。
燃やしているのは、
LNGが多い。
その理由は
安定した供給が得られること、
石炭よりクリーンなこと。
これらをさらりと説明します。
さらに、つっ込んで問いかけます。

日本で一番最初に取り入れられたのはどの発電方法でしょう?
正解は、これも火力発電です。
1887年(明治20)南茅場町に設置されたのが日本最初の火力発電所。
石炭火力でした。
当てずっぽうで手を挙げさせると、水力発電でした。
なぜ、そう思ったのでしょうか?
ちなみに、水力発電の始まりは1891年(京都)です。
雑学的な話はここまで。
いよいよ、ここから6年の内容に入っていきます。

発電方法に火力、水力、風力がありますが、
この3つの発電の仕方の共通点は、何でしょうか?
この問いは、教科書の図を見ていると気づきます。
発電機を使っていることです。
「1.電気をつくる」とタイトルを板書。
続けて「発電機」と書いて投げかけます。


発電機は、あるものと仕組みが同じです。
それは、何でしょう?
モーターです。
モーターが磁石と電磁石(コイル)でできていることは
5年生で学習しています。

電磁石とはどういうものか、3つくらい言えますよね?
C1:電流が流れたとき、磁石になります。
C2:電流の向きを変えると極が変わります。
C3:電流を強くすると鉄を引き付ける力も大きくなります。
クラスの半分は、この3つのうち2つは言えました。
さらに投げかけます。

モーターは、電磁石に電気を流すことで軸が回転します。
そこで、ある人たちはすごいことに気が付きました。
それは、何でしょうか?
みなさんも、同じように発想ができれば天才かもしれません。

数人が、気が付きました。
C:モーターを回転させれば、
逆に電気が発生するのでは?
T:すばらしい!
天才!!・・・かもしれません。
大いにほめます。
話が続きました。
ここから体験する活動に入ります。

では、みなさんも電気を作ってみましょう。
・・・簡単ですよね。
頭髪を指しながら
「ここでできますよね」と言いつつ、下敷きを出します。

ぽかん、としている子ども達。
T:髪の毛がくっつきます。これは静電気です。
でもこの電気は使えませんね。

このようにして電気を作ってみましょう。

演示します。
ゴムでできた棒をシャフト(軸)に当て、
勢いよく引くと軸が回り、豆電球がピカッとなりました。
そこで、指示。
この現象を言葉で表現させます。
C1:光りました。
C2:電流が流れて豆電球が光った。
C3:モーターの軸を回転させると、電流が流れて
豆電球が光った。
台座にモーターと豆電球を固定したこの実験器具は、
2人に1台になるように準備しておきました。
10分程度を使って一人一人に確かめさせます。
うまく回転がかけられないと光りません。
やってみせるのが一番。コツを教えて回ります。
実験を切り上げ、片づけをしてから投げかけます。
※子ども達の手元に物を残してはいけません。いじり出します。

モーターで電気がつくれましたね。実験成功です!
でも・・・使えませんねー。一瞬ですぐ消えちゃいました。
ずっと光らせるには、どうしたらいいですか?
これには、すぐに反応がありました。 回し続ければいいです。
やおら、机の下から道具を取り出します。

T:じゃ~ん。
これは、手回し発電機と言います。
ハンドルを回すと中のモーターが回って、
電気がつくれます。
電気をつくることを発電と言います。
手回し発電機の使い方を教科書で確かめます。
次に、乾電池との違いを子ども達に言ってもらいます。

手回し発電機の特徴は何だと思いますか?
豆電球を光らせるだけなら、乾電池でもできますよね。
C:電流の大きさが変えることができるじゃないかな。
T:どうしてそう思うの?
C:モーターの軸を回した時、速くやらないと光らなかったから、
ハンドルの回し方で、強さが変わると思うよ。
T:まだあるかな?
C:ハンドルを回す方向を逆にすると、電流の向きが変わるんじゃないの。
こんなやりとりを経てお待ちかね、手回し発電機を使っての実験になります。

ノートには結果を書く表を作らせます。
回 し 方 | おそい | ふつう | 速い |
豆 電 球 | |||
プロペラ付 モーター |
※モーターにプロペラをつけるのは、回転の速さが捉えやすくなるからです。
実験活動では、時間差が生じます。
そこで、結果まで書けたら考察も書くよう指示します。
ハンドルの回し方と電流について分かったことを自分の言葉で書くのです。
ノートを提出させ授業終了です。
この実験の結果の共有は、次時に行います。
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