専科でない教員による音楽授業について紹介します。
この取組みが少しでも現場のお役に立てたら幸いです。
はじめに
音楽大学を出ているわけではありません。
歌唱力はありませんし、
ましてや自在にピアノを弾いて授業を盛り上げるなど、とんでもありません。
ただ、
中高生の頃は吹部でTrp.を吹き、
市民オケにも入っていましたから、音楽との関わりはありました。
小学校の教員となりました。
低中学年を受け持った時には、音楽専科は付きませんから
音楽の授業は自分でしていましたが、その回数はさほど多くはありません。
担任をはずれ級外職員になりました。
そして、頼まれました「音楽の授業をやってください」と。
学校職員なら周知のことですが、
職員の持ち時数を均すため級外教員が数コマの授業を担当します。
その教科を何にするかは担任の意向次第。
何でも引き受けます。この年齢になると「断る」ことなどできません。
久しぶりに音楽の授業をすることになりました。
どのように進めたのか、以下ご覧ください。
1.まず、自分を「音楽モード」にする → Jump there
2.授業のメニューを書いておく
3.声出しから始める
4.新しい曲の指導 → Jump there
5.ソアーベ体操 で気分転換
6.リズムの指導 → Jump there
7.リコーダーの指導 → Jump there
8.授業には5つの要素を入れる
9.指導要領の具現化について
10.授業の初めに歌う曲
11.輪唱の指導 → Jump there
1.まず、自分を「音楽モード」にする
出勤は、子ども達の登校してくる1時間前です。
(若い頃からそうですが)
早朝、しんとして職員もまだ少ない中、
音楽室に行ってピアノに向かい、数曲弾いて指を慣らします。
(とは言ってもブルグミュラーの子ども向けの曲集レベルです。)
声出しも行います。
半音ずつ移調していく、よくある音階練習です。
伴奏CDに合わせてララララ、ラララララ~と歌います。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/karaoke_nessyou.png)
音楽の授業がある日は、
このようにしてまず自分の体を「音楽モード」にします
次に行うのが、掃除。
黒板を拭き、
チョークの粉を拭ったら机・椅子を整頓します。
音楽室の床もモップがけします。
子ども達が座り込んで活動することがあるからです。
その日に使うCDをデッキに挿入したら音量をチェック。
必要に応じて楽器類を配置しておくこともします。
これで子ども達を迎える準備ができました。
キーボード(右写真)を用意するのは、持続音が必要だからです。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/06/P1040973-1024x768.jpg)
2.授業のメニューを書いておく
授業のメニューを書いておきます。
入室してきた子ども達が黒板に目をやると、
その時間の内容(活動)が分かるようになっています。
盛だくさんに思われますが、(右)
逆に1曲のみで45分授業するなど、もってのほかです。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/musick-board.jpg)
バラエティな内容で45分間を過ごす。
あたかも音楽劇に参加しているかように、というのが私の授業イメージです。
この日の扱うのが10曲近くになっていますが、
指導の観点からいうと歌唱・リズム・器楽の3つの内容です。
黒板に書いておくと、子ども達は見通しをもちます。
教える側にとっては、流れの確認ができます。
授業のテンポがよくなります。
3.授業のはじまりは 声出しから
子ども達が入ってきたと同時にCDを流します。
この日は「エーデルワイス」でした。
自席に向かって歩いている子ども達に「立って歌いましょう」と指示します。
授業者は子ども達の前に立ち、表情を豊かに指揮をします。
演技です。
「こいのぼり」・「茶摘み」と続けて歌います。
この3曲は指導を終えている曲です。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/musician_shikisya.png)
なぜ歌うことから授業を始めるのか。
子ども達の心と体を「音楽モード」に切替えるためにします。
おなかから声を出し、張りのある声で歌うことに慣れさせたい意図もあります。
歌うことで季節を感じさせることもねらっていますし、
この曲で歌唱のテストを近々するので、習熟させておきたいというのもあります。
4.新しい曲の指導
子ども達に新しい曲と出会わせるには順序があります。
1.歌詞を読ませる。(言葉の意味を教えることもある)
2.情景を思い描かせる。(発問を用意しておきます)
3.CDで範唱を聞く。→ 感想を発表させる。
※どんなことを言えばいいのか一度、指導が必要です。
4.階名唱をさせる。
※フレーズごとに行います。
5.範唱CDと一緒に歌う。→ CDなしで歌う
※単音で音をとりながら行います。
6.伴奏CDで歌う。
1~6を一気に行うこともあれば、数日に分けてすることもあります。
旋律に未だ馴染んでなかったり、音程の曖昧なところがあったり、実態に応じて。
この日は、部分合唱がある曲なので下パートの音取りをしました。
さらりとやってソアーベ体操に移りました。
5.ソアーベ体操 で気分転換
この体操は、
福井県で児童合唱団の指導をされていた坪口 純朗先生のセミナーで知りました。
簡単に言うと、
ラジオ体操のような動きを先生がし、
子ども達にまねをするよう指示して始めるもので、
右、左、右、左・・・と規則正しい動きが突然変わるので、
思わず子ども達が笑い出すというものです。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/junbiundou_shinkyaku-1.png)
※坪口先生はこのセミナーの数年後に亡くなってしまわれました。
著書があります。ネット上でも紹介されています。
気分転換におすすめ!ソアーベ体操:ありがとう幸せな毎日 ハピメロ:SSブログ (ss-blog.jp)
緊張をほぐし、リラックスさせる効果があるので、
授業の初めにすることもありますが、この日はメニューの5番目に入れました。
歌が続く流れなので、一旦ブレイク。気分転換をはかります。
![盛りだくさん de 音楽授業](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/06/P10007tyu-1024x500.jpg)
この活動は、音楽室の後方スペースで行います。
写真のように整列させると、そのまま歌唱指導に移ることができます。
その立ち位置を固定し覚えさせれば、発表会等での整列がスムーズです。
6.リズムの指導
ソアーベで並んだ隊形のまま、「リズム打ち」に移ります。
教師 → 子どもで4拍もしくは、8拍のリズムをまねさせます。
![盛りだくさん de 音楽授業](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/06/3537b1d0855a7adfe548b469e3cae620-1024x156.jpg)
全音符から始めて、二分音符、四分音符・・・と刻んでいきます。
シンコペーションや付点八分と十六分、3連符も。
強弱もつけます。
この活動は、3分間ほどで終えました。
慣れてきたら教師役を子どもにさせていきます。
できることはどんどん子どもに振っていきます。
7.リコーダーの指導
ソアーベ体操が終わり、次はリコーダーです。
音楽室の後方から自席へ戻りますが、移動は音楽に合わせて行います。
キーボードでマーチを弾きます。
まず4小節ほど足踏みをさせてから、合図をして自席へ向かわせます。
リコーダーの指導は、
指導時期によって変えていきますが、この日は
3音(ソ・ラ・シ)の簡単なフレーズを教師が吹き、子どもにまねをさせました。
聴いていると、
タンギングができていない子どもがいることが分かります。
その音を出しているらしい方向の子ども達に吹かせ、指導します。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/recorder_girl2.png)
リコーダーの曲集を買わせているので、少しずつ進めないといけません。
次のようにします。
1.楽器を置かせ、階名唱をさせます。 please repeat after me で行います。
※読めない場合は、書き留めておくように指示します。
2.楽器を持たせますが、吹かせません。階名唱をしながら指だけ動かします。
3.ペアを組ませ、その指使いが出来ているか相互でチェックさせます。
4.思いっきりテンポを落として吹かせます。
5.インテンポ(標準の速さ)で演奏できるようになったら、
指が回る限界くらいまで速くしていきます。「できるかな?」と煽ります。
最後にインテンポに戻していきます。
吹けるようになった曲は、学年末の発表会のレパートリーになります。
8.授業には5つの要素を入れる
一コマの授業には、
5つの要素を入れるのが理想です。
歌唱、器楽、リズム、鑑賞、楽典の5つです。
その日のメニューによっては入れられない時もあります。
はずすことができないのが、「楽典」です。
これは音楽活動をスムーズに行える用語であり、
概念(?)です。
繰り返して指導し、使えるようにします。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/musick-board11.jpg)
学習指導要領の3年生、4年生の内容として、
・ハ長調の旋律を視唱したり視奏したりすること
・簡単なリズムや旋律をつくって表現すること、とあります。
繰返しになりますが、
楽典は、音楽活動をする上で必要なワードであり、使えるようにしなければなりません。
秋ごろから「楽典」を指導内容に入れるようにしました。
※学習指導要領音楽篇には、音符、休符、記号、用語などが40近く挙げられており、
「理解し、活用できるよう取り扱う」とあります。
9.指導要領の具現化について (教科書だけでは足りません。)
学習指導要領の解説編に、どんな授業にすべきか指針が示されています。
3,4学年の頁から部分的に抜き出してみるとずいぶんあります。
・手や体で音の高低を表しながら歌ったりすること
・音程感覚をより確かなものにしていくこと
・音楽の流れを感じながら読譜できるようにすること
・呼吸を意識した歌い方を身に付けるようにすること
・自分の歌声を全体の中で調和させて歌うこと
・重なり合ってきれいに響き合ったりすること
・楽しく無理なく,声を合わせて歌うこと
これらの具現化を考えたとき、教科書の曲だけでは足りないと思いました。
そこで取り入れたのが「発声のドリル」と「輪唱」です。
「発声のドリル」は岩河三郎氏の作詞・作曲になるものです。
3曲あります。
のびのびとした明るい声にするポイントとして
(1)あくびをするときのように喉を開き、
(2)ためいきをつくように力を入れないで声を出し、
(3)腹筋を意識してスタッカートの練習をする、と説明が書かれています。
これを毎回授業の初めに歌うようにしました。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/fukushikikokyu_sleep_man.jpg)
曲(1)には3度、(2)では5度をレガートでのばすところがありますが、
音程を意識させるために両腕を上下して指揮をすると、子ども達も自然にまねをします。
にににこして楽しそうでした。
10.授業の初めに歌う曲
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/f9d9eca738b2a33e3441afa73b1b7723.jpg)
初めに歌うもう1つは「ハローハロー」です。
「ハローハロー」 中 明子作詞 アメリカ曲
授業の始まりにぴったりの曲です。
パートを4つにして最後の音をのばすとCのコードがきれいに音楽室に響きます。
4年生になって秋ごろか、ようやく3和音がきれいに鳴ります。
頃合いを見計らって、子ども達だけでさせていきました。(写真)
11.輪唱の指導
教師がいきなり歌い出して輪唱が始まります。
(曲名は、黒板に書いてあるので前置きはありません。)
輪唱は、歌い出しがポイントです。
1フレーズが終わりかけるとき「ハイ」と合図を出します。
追いかけるパートにはっきりと指示をします。
新しく輪唱曲を教える時は、次のようにします。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/music_gassyou_kids_white.png)
2回ほど全員で歌ったところで子ども達をAとBの2つに分けます。
覚えたかどうかみるのです。
まずAを立たせ、歌わせます。
音がとれていない様子が明らかになった時点で終了。座らせます。
今度は、Bを立たせます。
Bの子達は、
僕たちは大丈夫だもんね、と自信満々で立ちます。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/couple_egao_bnessman-2-150x150.jpg)
Bのみなさん、ばっちりでしたね。後から歌うから有利だったかな。
ではAのみなさん、もう一度やってみましょうか。
と再びAを立たせ、授業者も加勢して一緒に歌います。
すごい、すごいと大いにほめて、AとBで輪唱をさせました。
日を経て何度か歌った後は、輪唱パートを3つ4つにしていきます。
輪唱曲
ハーモニーを感じながら歌う技能は、学指にその旨が記されていますが、
私が知る限り、輪唱曲は教科書には全く載っていません。
そこで、いくつかの歌集から拾って歌わせました。
「さよなら」 岡本敏明作詞、ドイツ曲
「ハローハロー」と対になっている曲。
授業を終わるとき、私が歌い出し、子ども達が追いかけて歌います。
見送りのように私が手を振るのを合図にして、
子ども達は歌いながら音楽室を後にしていきます。
「歌いましょう」 岡本敏明作詞、Mハウプトマン作曲
フェルマータで音を延ばすように指示すると和音が心地よく響きます。
そのタイミングが難しく、指揮の力が試されます。
「だるまさん」 小山章三作詞、作曲
だるまさんになって左右に振れながら歌います。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/06/dance_youchien.png)
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/06/dance_youchien.png)
「夜が明けた」 岡本敏明作詞、フランス民謡
4年生の子ども達が5年になると、お待ちかねの宿泊行事。
そのキャンプソングとしても知らせておきたい曲。
朝の1時間目のクラスで歌います。眠気覚ましになるかも。
「シャロム」 井田誠一作詞、パレスチナ民謡
授業を終わるとき、この曲を歌いながら音楽室を退出させました。
転出をすることになった児童がいたとき、お別れ会のしめで歌いました。
胸にじんときます。
「蚊のカノン」 小山章三作詞、ハンガリー民謡
これも短調の輪唱曲です。
蚊を退治する動作を入れて歌います。
関連記事
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/12/95768e12d9171ee0353f8e71c2ab7a5d.png)
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/12/95768e12d9171ee0353f8e71c2ab7a5d.png)
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/12/bc6f948490876f30c43b6251298d70c7.jpg)
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/12/bc6f948490876f30c43b6251298d70c7.jpg)