初任者研修の指導資料として作成(2007年)したものを、記事にしました。
現場の先生方の参考になりましたら、幸いです。
1.はじめに
2.会場校の取組み
3.授業は力をつける時間です。
4.必ず正解がある
5.まずは、文章をしっかりと読めること
1.はじめに
Y市立小学校で校内研修会があることを知った。
外部からの参加もOK、という。
授業者は、国語授業の名人と言われるN先生。
これは行かずばなるまい。
参加を学校長に申し出ると、出張扱いとなった。
ところで、YN先生をご存じだろうか。
ご迷惑がかかるといけないので、ここでは「N先生」としておくが、
授業や講演で全国に行かれ、著作物の数も多いので、
知らない、
本も読んだことがないという方は、あまりいらっしゃらないのではないかと思う。
実践にもとずく明快な主張。自ら硬派の教育と称する授業観。
その書は、赤線を引きながら一気に読んでしまうものばかりだ。
![音読の授業](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/OIP-13.jpg)
2.会場校の取組み
授業は、研究主任の学級だった。
5校時が始まる10分前からスタンバイ。
子ども達は音読をしてN先生を待っていた。
それはそれは、上質の合唱を聞いているかのようだ。
机の上にはA4横サイズの冊子がのっていた。
その表紙に
「音読ファイル 5年」とあったから
全校で、詩文の音読に取り組んでいることが分かる。
子ども達は
「春望」「偶成」「お経」を次々に音読していった。
張りがあり明るい声で、聞いていて気持ちがいい。
どの子どもも諳んじているふうで、テキストは見ていない。
![音読の授業](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/schoo_ondoku.png)
そこにN先生は、ふらりと現れ
「こんにちは」と挨拶をするとすぐに授業を始められた。
3.授業は力をつける時間です
以下、記録から授業を起していく。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/OIP-13.jpg)
よーし、読んでみよう。最高の読み方をするんだぞ。
N先生、お決まりの「投げかけ」から始まった。
最前列の一人を指名。
起立させて数行を読ませた後、指導が入る。
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やりなおし。声が小さい。
「やがて、おみつさんは~」 このくらいの声で読むんだよ。
声量を注意し、範を示された。
再び読み始める女の子。
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まだ、小さい。
無理をするんだよ。勉強というのは。
ひとりの子どもの指導をとおして、
教室にいる全員に学習に対する心構えを説いているよう。
授業とは、力をつける時間なのだ。
教室の空気がぴんとしてくる。
その子は3度目を精一杯の声で読み、N先生はよくがんばった! とほめた。
続けて2人に読ませる。
「 」の部分を会話文と言い、
それ以外を地の文と言う、と学習用語を教える。
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会話文と地の文は続けて読んじゃいけないの。
間(ま)を入れる。 こうやって読むんだ。
示範したあと、別な子どもに読ませる。
「教わったことはできるようにならないとね、なかなかいい!」
とほめた。
AかBで問う
N先生の発問は、言葉が短い。
必ず、指示とセットになっている。
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大きく張って読むのは、会話文(A)か地の文(B)か。
AかB、ノートに書く!
挙手をさせると子ども達はA派とB派、半々に分かれた。
この後をどう授業されたか。
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わけを言える人! (6人がぱっと挙手) 起立! (6人が立つ)
ぼくはAで、会話文は大きく張って読みます。わけは~
と言ってみよう。
子ども達の発言は、たどたどしい。
理由を言う話形に慣れていないようだ。(どこの学級でもそうかもしれない)
6人が発言を終えると、
N先生が「反論!」と一声。反論を言え、というのである。
4人が立ち、
その発言を先生はしゃがんで聞いている。
なぜ、N先生はしゃがんだのか。
発言者に注目させたいからだろう。このような授業技術も勉強になる。
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私がやってみる。
初めにA(会話文を声を張って読む)、次にB(地の文を声を張って読む)。
さて。どっちが自然だったか、ノートに書く!
ノートに書くよう指示するのは、ひとり一人に考えを持たせるためだ。
誰一人B(地の文を声を張って読む読み方)に挙手しない。
子ども達の発言を尊重しながらも、
会話文は、声を張って読むようにするのが基本であることを指導された。
4.必ず正解がある
授業は、読解に移った。
通りかかった若い大工が、
おみつの作った不格好なわらぐつを買う場面である。
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おみつさんは、なぜ赤くなったのか、ノートにズバリと書きなさい。
先生は、教室を回りながら、
数人の子どもの耳たぶをもみもみしている。
※氏の有名な授業展開上の手法だが、不用意にまねない方がいい。
今は、そういう世の中になっている。
![わらぐつの中の神様](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/162629444.jpg)
![わらぐつの中の神様](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/162629444.jpg)
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耳組起立! (耳をさわられた者は立ちなさい、という意味)
上野君から(ノートに書いた事を)読んでもらうから、
みんなはノートに「上野」と書いて。 ※児童名は仮名
<上野君の発表>
ハイ、正しかったら○と書きなさい。
耳組の4人が発言した後、
子ども達がどう聞いたのかN先生は、手を挙げさせる。
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全部×をつけた人! (2人が手を挙げる。 ふーんとうなづく。)
全部○をつけた人! (1人挙手)
・・・それは間違いだ。 よく読めたことにならない!
野口先生の授業には、必ず「正解」がある。
発言すれば、何でもOKの授業ではない。
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「わらぐつを差し出すことに恥ずかしくなったから」に×を付けた人?
そのわけが言える人は、手を握る(グーにする)!
グーの人、起立。
この場面でもすぐれた指導技術が窺える。
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赤くなったのは恥ずかしかったからだ。では、
なぜ恥ずかしくなったのか。そこまで書いていないとダメなんだよ。
と話し、N先生は正解を説く。
この後、
「おずおずと」「まじまじ」というのは畳語ということ、
「けどー」の棒はダッシュということ、
「うれしくてうれしくて」は反復表現ということ、
こういう言葉を覚えておくといいと言い、国語における学習用語を教えていた。
5.まずは、文章をしっかりと読めること
国語の授業では音読を大切にする。
教材文をしっかりと読めるようにする。これが一番目だ。
読解の指導では「なぜか」を問う。
若い頃を思い起こせば、
国語の授業でなぜと聞いてはならないという指導があった。
だが、
「なぜ」しか子ども達に考えさせる問いはない。
思考の原点である、とN先生はおっしゃる。
![](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/textbook_kokugo.png)
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学校の役割は、学力を形成すること。
向上的変容をはかるところである。 そんな思いを強くして研究会を辞した。
![わらぐつの中の神様](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/0622da73-c070-47e0-a330-bb4e34b08a12-1024x768.jpg)
![わらぐつの中の神様](https://ri-sen.com/wp-content/uploads/2023/08/0622da73-c070-47e0-a330-bb4e34b08a12-1024x768.jpg)
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