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新出漢字  「進める」のは子どもです。

新出漢字の指導法に関する記事です。
現場の先生方のお役に立てれば幸いです。

子どもが進めます  

いきなりではありません。
進め方をやってみせて、頃合いを見計らってさせていきます。

手順の一番目は、「漢字の割り当て」です。
手っ取り早いのは、名簿順で割り当てしまう方法です。

新出漢字の指導

やりたい! 
そういう子どもから割り当てていく仕方もあるでしょう。

彼等は、進め方の要領を呑み込めているとみていいわけで
たぶん、物怖じしないでやりきります。

もう少し、したらやってみようかな、
そんな子どももいますから、手本にもなります。

ちなみに、
新出漢字の指導の時間を「漢字さん こんにちは」とネーミングしていました。

漢字さん こんにちは」 

その進め方をご紹介します。

子ども達は漢字ドリル(スキル)のそのページを開いています。
この日、「平」という漢字を担当するのはAさんです。
前に出て来て話し始めます。

Aさん

」という漢字を練習しましょう。
読み方は「ヘイ」。
水平、平和の「ヘイ」。平等のように「ビョウ」とも読みます。

訓読みは「たいら」の「たい」です。平社員の「ひら」もあります。
読みましょう。 水平、平和、平等・・・                                        

Aさんの後について子ども達は追い読みをします。

書き順は、1、2、3、4、5の五画です。
空書きしましょう。                            

子ども達は黒板の方へ人差し指を向けます。
Aさんの「せーの、1、2、3、4、5!」に唱和して空書き。

次は、「指書き」です。

1、2、3、4、5と言いながら「指書き」を3回してください。

子ども達は、机の空いたスペースに指書きをします。
それぞれが小さな声で1、2、3、4、5と言っています。

ペア学習してください。

この投げかけは、隣に座っている者どうしで書き順の確認をし合うという指示です。
お隣さんが曖昧な書き方をしている場合は、二人一緒に「指書き」をするきまりにしています。

なぞり書き練習をしてください。
(間)
次は「投」です。 Bさんお願いします。  

「なぞり書き」とは、薄く印刷された部分をなぞるということです。
はみ出ないようにさせます。
なぞったら、練習用のマスに書きます。

以上で終わり、Aさんは自席へ戻っていきます。  

※部首名は扱いませんでした。


4月に学級を受け持ったらこのような順序で新出漢字を指導して手本を見せるわけです。
頃合いを見計らって子ども達にさせていきます。

発表を担当する子どもがつっかえることがあったらフォローします。

1年間に配当されている漢字は200ほどありますから、一人3~4字担当することになります。
慣れてくると、
気を付ける所は〇〇ですなどと留意点を加えるなど工夫する子も現れます。

時には、補足も

発表中に補足説明することもします。
漢字の成り立ちについて等です。

Ri-せん

成り立ちについて話しましょう。
水の上に浮草が浮いている形から「たいら」の意味を表します。

新出漢字の指導

もう一つ。
4年生に配当されている「最」。

ポイントは、「耳」の部分(5画目の右払い)が切れていることです。
なぜ切れているか、その説明をします。

新出漢字の指導

昔の中国の話です。
敵の大将を倒した時は、その証拠として耳をむしり取ったそうです。

平べったい「日」は、帽子。「又」は手です。
帽子の下に手を突っ込んで耳をつまんでいる形です。

そこから特別にとりあげる、とりわけ・もっともの意味を表します。

参考としていたのは、「下村式漢字の本」1~6年 全6巻です。

「となえておぼえる漢字の本」 著者:下村昇 絵:まついのりこ  偕成社
下村昇 | 偕成社 | 児童書出版社 (kaiseisha.co.jp)

新出漢字の指導

準備 (小黒板に書いておく)

発表の前に漢字を書いておきます。

ドリル帳の1ページには6~8字あります。
それらを小黒板に書いておくのです。(写真) 

小黒板とは、
正方形に切ったべニア板に黒板塗料を塗ったものです。
自作の教具です。

書けたら黒板の上に掲示しておきます。
指導が終わったものもこのように掲示しておきます。

新出漢字の指導

発表する子どもに書かせる、というやり方もあるかもしれませんが、
文字の大きさ、位置を考えて書くのは子どもには難しく、こちらの方がベターだと思います。
予告にもなります。

以前を振り返って  

教員になった頃のことです。
新出漢字の指導は、やたらと数書かせていました。

手に覚えさせる」というものです。
練習帳に1行ずつ漢字を書きなさい、などとやっていました。
子ども達は1つの漢字を10回以上書くことになります。

当時としては、主流の方法だったと思います。
経験則から言うと、一つの漢字を30回あたり書くと覚えるようでした。

英語学習で、単語を何度も繰り返し書いて手にスペルを覚えこませていた人は少なくないと思います。
あるサイトの情報によると、
運動の記憶によって、自然と手が勝手に動くようになり、頭と身体の両方で覚えていくのだそうです。
ですから、その意味では誤った方法ではなかったと思われます。

しかしながら、
このたくさん書かせる方法を画一的に行うにはいくつか問題がありました。

  覚えるのに必要な回数は、人によって違うのではないか。
  画数の少ない漢字も指定された回数を書かねばならないのか。
  機械的に書いて単なる手の運動になっている子どももいる。

新出漢字の指導をどのように進めたらいいのか、いつも悩んでいたことを思い出します。
そして、当時の空気として
指導方法について教員同士が情報交換するなどということはありませんでした。

1980年代になって、
教育技術を共有するという考え方(教育文化)が広まっていきました。
新出漢字の画期的な指導法を知ることとなりました。
空書き、と指書き。そのチェックシステムです。

この記事は、その延長線上にある取組みです。
子ども達に力をつけたいと願い取組みを発信してきた多くの先生方に感謝したいと思います。

追記

1.子どもに新出漢字指導の進め方に2通りの考え方があります。

  教科書の進度に合わせて出てくる漢字を指導する方法と、
  進度とは関係なく進めてしまう方法(漢字先習)です。

  3年生あたりから各学年200字くらい配当されています。
  ドリル帳も買わせていますから、どんどんと進めていかなければなりません。
  進度とは関係なく進めていました。

2.小黒板の利用
 
  書写の指導でも使いました。
  あらかじめ書いておくことができます。

新出漢字の指導