「植物の水の通り道」の授業の様子を紹介します。
授業行為についての説明も入れました。
現場のお役に立てたら幸いです。
※コロナ禍の時期に行った授業を元に、書き起こしました。
(当時は、話し合い活動等の制限がありました。教師主導の授業です。)
※写真(映像)はプロジェクターで提示しました。
尚、「植物と日光」たたき染め の授業シナリオについてはこちら
1.授業のはじまり 植物の名前を問う
・同じ問いを繰り返す
・白い花のホウセンカもあるのかー → Jump there
2.人のからだと同じように 植物にも管(くだ)がある
・切り口は? 図を見せて問う
・図を書かせる
3.実験前に結果を知る → Jump there
・写真を見て一言どうぞ と表現させる
・まとめも書いちゃう
4.いよいよ実験 準備は4月から → Jump there
関連記事(下のボックスをクリック)

1.授業のはじまり 植物の名前を問う
授業開始。挨拶の後、開口一番に投げかけます。

この植物の名前は何でしょう。
間髪を入れずに、画像を映し出します。
ヒメジョオン(帰化植物)の写真です。
よく見かける植物ですが、子ども達は名前を言えません。
案外、知らないものです。
この植物、
6年の理科授業と関係がないように思えますが、さにあらず。
教科書の数ページ先を見ると、ちゃんと出てきます。
色水を吸わせる実験に使う植物として載っているのです。

植物の名前を問う投げかけで、授業を始めました。
冒頭から?マークが子ども達の頭に浮かんだと思います。
まず、その状態をつくることがねらいでした。
授業づくりについて(コメント)
どのように授業を始めるか、授業の直前まであれこれ考えます。
如何にして子ども達を引き付けるか、授業に引き込むか。
始まりが肝心。
その後も、おもしろく授業が進むようにします。
授業者は心してその準備をしなければならない、と思っています。
同じ問いを繰り返す
この日は、同じ問いを繰り返すことでテンポよく進めようと考えました。
初めにヒメジョオンを見せ、植物の名前を知らせました。
次はジャガイモ畑の写真を出して、同じように問います。

この植物の名前は、何でしょう。
「ジャガイモです」と言える子どもはごく少数です。
どこかから「じゃがいも?」という声が聞こえました。
紫色の花が咲いているので確信がもてなかったのでしょう。
ちなみに、
咲いたばかりの花は紫色で、後で白くなっていきます。
このジャガイモも後に教科書に出てきます。
色水を吸わせる実験に使う植物です。

3つ目の写真を提示。名前は分かるでしょうか。

この植物の名前は、何でしょう。
ホウセンカです。
実がついている写真です。
答えられたのは一部の子どもだけでした。
3年生で育てているはずですから、ちょっと不可解。
つまむと弾けて種が飛び出す、
そんな遊び(体験)をしなかったのでしょうか。
小学校の理科学習では
自然にはたらきかける体験を保障することが大切、
だと思います。(していると思いますが)
ホウセンカを提示した理由も、前の2つと同様。
植物の水の通り道の実験で使う植物です。

白い花のホウセンカもあるのかー
今度は別のホウセンカの写真を見せます。

この植物の名前は、分かりますよね。 「白花ホウセンカ」です。
解説
この種(たね)を園芸店で見かけません。
あまり需要がないためか、店頭に出すほどには売られていないようです。
教材社に手配してもらい、春(4月)に種まきをし、育てておきます。
これは授業者の仕事です。
来年度用として種をとるためには、注意が必要です。
赤い花のホウセンカの近くでは育てないこと。
さもないと交雑してしまい、白花になりません。

ここで子ども達に見せておくのは、
色水を吸わせる実験で使うので、初めに出会わせておきたいと考えたためです。
さて、
授業の冒頭で、3つの植物(ヒメジョオン→ジャガイモ→ホウセンカ)を見せました。
いずれも「植物の水の通り道」の学習で使う植物でした。
この導入は体育授業で例えるならば、主運動に入る前の準備運動という位置づけです。
2.人のからだと同じように 植物にも管(くだ)がある
ここからが本日のメイン。
次に提示する写真もホウセンカですが「萎(しお)れているホウセンカ」です。
※教科書の画像を使います。

萎れていますね。水をやると・・・ 元気になりました。
「元気になったホウセンカ」の写真を見せます。
※教科書の画像

どうして元気になったのでしょう。
子ども達から答えがすぐ返ってきます。「水をやったからです。」と。
そこで、問います。

根から水を吸ったと考えていいですか? それで葉もぴんとした。
では、根から取り入れた水は、植物のどこを通るのでしょう。
こんな反応がありました。

根から吸った水は、茎を通ります。

茎の中に水が通る管があるんだよ。

人や動物に血管があるように植物にも管があるんじゃないかな!
3人目の発言には、目が丸くなります。
そういえば「人や動物の体」の単元で学んでいました。
前の学びが生きている発言。すばらしい。(うんとほめました。)
続けてテンポよく画像を見せていきます。
「色水の入ったフラスコにさしているホウセンカ」の写真。
その隣に並べるのは「花や葉が赤く染まっているホウセンカ」の写真。
そして、全体に問いかけます。

茎も葉も花までも赤く染まっていますね。 なんで赤くなったのでしょうか?
根が赤い水を吸ったからだ、と。
それを受けて問います。

この茎を横にスパッと切ります。どうなっているでしょう?
切り口は? 図を見せて問う
小黒板に書いておいた図を見せます。
これは、授業前に、描いておきます。
切り口がどうなっているか、図を説明させました。
A・・・全く染まっていない。これはありえません。
B・・・茎の真ん中が水の通り道になっている。
C・・・水の通り道は、いくつかあるという図です。
D・・・茎全部が通り道ということ。
予想としては、A以外のようです。

続けて、もう一枚の小黒板を出します。

今度は、縦にカットしました。どう見えるでしょう。
ほとんど全員が(ア)に手を挙げました。
(エ)は、(ア)と似ているが変だと言います。
念のため、
赤くなっているところは何かを問うと
水の通り道、だと返ってきました。

このとき、子どもから中学校で習う用語が出てきました。「導管」です。
よく知っているね、とほめました。
実験の図を書かせる
植物の水の通り道はどのようになっているのか。
子ども達は、横に切るとBかCかD。 縦に切ると(ア)と予想しました。
これより授業は、実験に移っていきます。

本当にそうなるか、実験してみましょう。 教科書は何ページですか?
このように投げかけると、ページをめくり出します。
お隣さんがそのページを開いているか、相互で確認させます。
授業では、時折このような「確認」の場面を設ける必要があります。
実験の仕方を音読させます。(その方法は、いくつもありますが)
小さい声でよいので声に出して読むように全員へ指示します。
ずっと聞きっぱなしの状態をブレイクさせるわけです。
次に実験図を書くよう指示します。
理科においては、
学習内容の理解をはかる上でも図を書かせることはとても大切です。
授業者も黒板に実験図を書きます。
途中で手を留め、
「皆さんの方が、上手ですよね、こういうのは。」と言うと子ども達は丁寧に書こうとします。
図には書き込みをさせます。
なぜそうするのかを言わせます。
脱脂綿 ・・・水の蒸発をふせぐため
印(しるし)・・水を吸い上げたのが分かる
根 ・・・吸い上げをよくするためカットする
色水 ・・・水の通り道がわかりやすくなる

3.実験前に結果を知る
実験をする前に、結果を教科書で調べます。
つまり、結果を知ってから実験をするのです。
ここでの実験は「どうなるか分からないから行う」ではなく、「ホントにそうなるか確かめる」
という位置づけです。

教科書にあるこの実験結果の写真を見ましょう。
スクリーンにも映します。
教科書の写真「色水にさして数時間後のホウセンカの全体、葉、茎」です。
その後、
「結果をノートに書きましょう。」とやると、子どもの力の差が大きく出てしまいます。
詳しく書ける子どもがいる一方で、短くさっと書いて済ましてしまう子どもがいます。
一人一人の読解力や観察力の差です。
なかなか文字にできない子どももいます。
そこで、部分ごとに画像を見せ、このように進めます。
この写真を見て一言どうぞ と表現させる

葉っぱを見て、一言どうぞ。

葉っぱが赤くなっているので、根から葉まで水が運ばれています。

すじ(葉柄、葉脈)が赤く染まっています。 すじとすじの間も 赤くなっている。

茎の切り口を見て、はい、一言。

茎全体が水の通り道、というわけではないことが分かります。

水の通り道は決まっていて、いくつかあるようだ。
このように対象を変えて言わせていくと、教室がどの子も書ける状態になっていきます。
すると、気が付いたことをまだ言いたい子どもがいました。

茎の中だけでなくて、外側も赤いすじが見られる。白かった花も赤くなっている。

根っこから花まで染まっている、ということは植物全体に水がいっているということです。
まとめも書いちゃう
ここで、一度整理します。
そうすることで、授業は分かりやすいものになります。

つまり、根から吸われた水はどのように通っていくのですか?
子ども達:根 → 茎 → 葉・花 です。

水は、植物の体のどこを通っていると言えますか?
子ども達:決まったところを通ります。細い管です。
子ども達からこの表現が出ない場合は、おさえる必要があります。
テストに出るからです。
T:この実験から分かったことはどんなことですか?
数人に言わせてからノートに書くようにします。
そして、その際にキーワードを入れるように指示します。
T:「根、茎、葉、細い管、全体」 という言葉を入れて書きましょう。
(その文章は省略。教科書に出ています。)
4.いよいよ実験 準備は4月から
植物の水の通り道 まとめをしていよいよ実験です。
ホウセンカに色水を吸水させる実験は、以下のようにしました。
1.準備は、4月から始まります。
ホウセンカの種まきをし、育てておきます。
白い花が咲くホウセンカの種です。
白花ホウセンカの種は教材社に頼めばもってきてくれます。
プランターでも大きく育ちます。
約40~50本近く、ホウセンカを育てておきました。
※ 1学級8本(8班)×4クラス + 予備
用意ができなければ、
ジャガイモかヒメジョオンを使うことになります。

2.実験の詳細を事前に決めておきます。
実験は、4人1グループとする。
8~9セット(グループ数)用意する。
3.当日の準備(授業者)
ホウセンカを根から掘りだしておく。
グループ1株として、バケツに入れておく。
4.理科授業
(1)外に集合
バケツ(ホウセンカ)を配り、土を水の中で落とさせる。
(2)理科室に移動
根を半分ほど切り落とさせる。
(このような活動をさせることが、学習経験として大切。)
(3)器具を配布
色水を入れた三角フラスコ(大)、脱脂綿、色テープを籠に入れておく。
(4)日当たりのよいところに置かせる。
天気がよければ、2時間ほどで、結果が出てきます。
植物の水の通り道 その実験結果の確認や共有は、翌日に行いました。