片々の教育技術 その幾つかを紹介したい。
現場の先生方のお役に立てたら幸いである。
その習得は、子ども達と授業(活動)を創っているときだ。
楽しく進めたい、そう思っているとひらめいてくる。
今回は、以下の5つを紹介する。
1.朝会(集会)を始める時の指導 (数百人を静かにさせる)
2.すぐに出来てしまう子への対応 (空白をつくらない) → Jump there
終わったら板書させる
3-1.小黒板について → Jump there
3-2.小黒板を使う授業づくり
4-1.授業の始め方 (号令いる?) → Jump there
4-2.授業の始め方 (号令に代わる工夫)
4-3. 10問テスト (号令の代わり) → Jump there
5.子どものまちがい →Jump there
終わりに
1.朝会(集会)を始める時の指導
体育館がざわついている。
これから朝会が始まるわけなのだが、子ども達はしゃべり放題だ。
この事態をあなたならどう収めるだろうか?

S先生は中堅の女性教師だ。
今日の集会の担当となっている。
どのようにするのか見ていると、
子ども達の真ん中に立ち、手をたたき始めたではないか。
3回たたいて、1拍休む。

ゆっくりとしたテンポで、それを繰り返す。
すると、
すぐに前列の子達が先生の真似(まね)をしだした。
その数はたちまち増えていって、おしゃべりの声は押しやられていく。
S先生、最後に3回打った後7回手を打つと、
あ、三三七拍子だ!
と誰もが思う中、にこにことお辞儀するとご自分の立ち位置へ歩いて行かれた。
一言も言葉を発していない。
体育館の喧騒とした空気を手をたたくことで一変させた。
3・3・7のめでたい拍子で。
見事だった。
集団を静かにさせる方法は他にいくつもある。
力量のある教師はそうした教育技術をいくつも持っている。
2.すぐに出来てしまう子への対応
課題をさっとやってしまう子がいる。
すぐに出来てしまうのだ。
賢い子ども達だ。
片々の教育技術として
その対応を紹介するのだが、まず、大原則がある。

時間差が大きくなるような課題は出さない
ということだ。
量が多いと時間差が大きくなるのは自明だ。
課題をし終えた子どもは、することがない。
別なことを仕出す。それが目に余ることもある。
空白をつくってはいけないのだ。
だから時間差が大きく生じないようにしなければならない。
課題を少なめにしても、時間差は生じる。
そうした時間差の問題について先生方はどうしているのだろうか。
終わったら板書させる
計算問題(適用問題)が3問あるとする。
黒板を6等分に区切り、指示する。

3問をノートにやったら黒板に書きに来ましょう。 1問につき、2人書けます。
計算をし終えた子ども達は、喜んで出てくる。
黒板に書きたいのだ。
多くの子どもは、活躍したい、と思っている。
それを満たしてあげよう。
板書できる枠は6人分ある。
では、7人目以降はどうするのか?
答えの判定役を任命するのだ。
赤で〇つけをするのだが、
間違えていれば、説明して正しい答えを書く。
待機中は、その言い方を考えさせておく。
これで更に3人分活躍させられる。

以下は、時間差への対応術ではないが、計算方法を説明する活動の例として紹介する。

2.5÷0.7は、それぞれを10倍して計算します。
つまり、25÷7として計算します。
答えは、3。
余りの4は、0.1が4つという意味なので0.4となります。
だから、けんじさんの計算は、正しいです。

3-1.小黒板について
教具も片々の教育技術の一つである。
小黒板、をご存じだろうか。
他校の参観の折などで、これを使っている場面を見たことがない。
それは学校備品ではなく、手作りしたものだからである。
大きさは、たて60cm×横90cm。
べニア板に黒板塗料が塗られている。こんなものをフツーの教師は、作らない。
使い道は様々ある。
明日の持ち物を知らせたり、行事の予告をしたりといろいろ。
事前に書いておき、必要なときに提示する。
授業では、考え方を共有する場合に使う。
これを画用紙で行っていた頃があった。
授業研究などでよく目にしたのだが、今一つぱっとしない。
子ども達は、
文字の大きさも考えず、マジックインキの細い字で書き、
画用紙の白い部分が光って見づらいこと、この上ない。
3-2.小黒板を使う授業づくり

小黒板はチョークで書く。
いくらでも書き直せる。
チョークは太さがあるから、文字も大きくなる。
裏にはマグネットがついている。
似た考えで寄せたり、注目させるべくセンターに持ってきたり、
移動・整理分別が容易。
難点は、残らないことである。
用が済めば消されてしまう。
タブレットが一人一台配布される時代となった。
子ども達のノートや撮ってきた画像などの提示ができ、ペンを入れることもできる。
操作一つで全員で共有できるようになった。
そんな昨今ではあるが、その操作は一手間ではないか?
小黒板はお手軽。出番はまだある。工夫次第。
小黒板と似たもので、マグネット式ボードがある。
短冊になっているものだ。
立式したものを書かせたり、短文を書かせたり。
これを使っている教員も見かけない。
授業を構想する時点で、
このような教具を使おうという発想(若しくはゆとり)が
ないのかもしれない。

4-1.授業の始め方 (号令いる?)
片々の教育技術 といえるのかどうかわからないが、
授業の始め方のことである。
長い間、子ども達が号令をかけて授業を始めていた。
周りの学級がそうしていたし、
自分が子どもの頃も、そうしていたから同じようにしただけであった。
号令の意味を考えなかったのだ。
号令はけじめをつけさせるため、
と聞いたことがあるが、果たしてそうか?
号令の直後に、おしゃべりが再開するのは、どうしたことだ。
けじめをつけるべき所作が意味をなくし単に形式化してしまっている証拠であるし、
または、
これから始まる授業には期待していません、という子どもらのメッセージかもしれない。
そこに気づかなかった自分が情けない。
4-2.授業の始め方 (号令に代わる工夫)
授業始まりの作法は、
担任が決め、言わせているのが実態の多くだろう。

A学級: これから〇時間目の授業を始めます。 礼!(お辞儀)
B学級: 姿勢を正して! これから〇〇の授業を始めましょう。
追いかけるように全員で「始めましょう。」と唱和
C学級: 気を付け! 礼!
全員で「よろしくお願いします。」

C学級で授業しに行ったとき、
よろしくお願いします、と声を揃えて言ってきたので、
「はい。お願いされました。 頑張ります!」
と返したところ、笑いが起きた。
当たり前の話だが、
お願いされなくても、
子ども達が乗り気でなくても、授業はしなくてはならない。
号令がかかるのを待っているというのも、もどかしい。
そこで、号令があろうがなかろうが授業を始めることにした。
そのためには、号令に変わる工夫をしなくてはならない。
一発で子ども達の頭を授業に切り替える、そんな始め方である。
4-3. 10問テスト (号令の代わり)
授業の開始時刻となったら「全員起立」と号令をかける。
先生が、号令をするのである。
続けて、10問テスト! と宣言する。
これは、算数の授業での例だが、他教科でもできる。
1 問目 7×4は?
2問目 3×15は?
答えが言える子どもは、黙って座るようになっている。
8割ほどが座ったところで指名。
答えを言わせる。
3問目 (1L升を見せて)この道具の名前は?
案外、言えない。ビーカーなどという子どももいる。
4問目 1Lは何dL?
※dLは今、教科書から消えているのかもしれない。
5問目 給食に出る牛乳パックは何mL? (中略)

指名されるのは、最後の方に座った子どもである。
これをテンポよくやる。
授業の始め方は様々あり、様々に工夫できる。
要は、子ども達を10秒で授業に引っ張り込むことである。
5.子どものまちがい
算数の授業の場面である。
次のような問題を出した。
T: 2610gを kgで表します。 ノートに書きましょう。
ぐるっと一回り。
「26Kg10g」と書いている子どもを見つけた。
あなたならどうするか?
いくつか方法が浮かぶだろう。
どうするかは時と場合、子どもによって違う。
この時は、
その誤答を板書して、子ども達に思ったことを言わせていった。
誰の答えかは、言わない。
誤答について、
初めに当てられた数人は、答えが違う、としか言わない。
何人目かになってようやく、間違っている理由として
定義を言う子が出てきた。
1000g = 1Kg

説明があり、正しい答えは 2kg610gと言うことが分かった。
学習指導で大切にしたいのは、その後のことである。
子どもの間違いを授業にかけたときは、必ずこう話すことにしている。

まちがえがあったお陰で いい勉強ができたね。
みんなの勉強の役に立ちました。 ありがとう。
子どものまちがいに寄り添うことも、「片々の教育技術」の一つだと思う。
終わりに
教員不足が起きている、という。
長時間に及ぶ労働実態からブラックな職業として避けられている。
報酬で解決する問題ではない。
働き方の改革が叫ばれ、現場では取り組みがなされているようだが、
授業準備に仕える時間を勤務時間内に位置づけないかぎり、
「改革」というほどのものには至らず、「ブラック」というイメージは拭えないだろう。
学校業務の中で最も大切なのは、授業だ。
そんな状況下にある先生方の少しでもお役に立てたらと思う。
学校における働き方改革:日本と諸外国の教員の勤務時間&担当業務! (teachforjapan.org)
教員の働き方改革が必要な背景・進まない原因は?進め方や取り組み事例も解説 | WEBマガジン「#Think Trunk」 | 学校・教育機関向け | JTB 法人サービス (jtbbwt.com)