話す力を小話でUPさせようという取組みです。
教師の資質として、話が上手なことに越したことはありません。
聞き手を引き付けるような話し方は、教員として身につけておきたいスキルです。
それを、小話をすることでUPさせようというのです。
1.小話をするとき
2.話し上手になること
3.小話1 「おいくつ?」de 勘違い → Jump there.
小話2 レリーフは顔を埋めて作った? → Jump there.
1.小話をするとき
授業のすきま時間にします。
「すきま時間」とは、
授業が早く終わってしまって時間が余った、ということではありません。
そんな授業は、論外です。
45分間の枠で準備をし、子どもの前に立たなくてはいけません。
ここでいう「すきま時間」とは、
授業を始められない場合を指しています。
教室にぽつぽつと空席。
全員が揃っていません。そんなことがたまにあります。
少し遅れる、との伝言。
その時、授業を始めることに躊躇があります。
こんな場合もあります。
外での活動から教室に戻ってきたばかり。
まだ息が上がっているとか汗が引いていないとか、少し待ってあげる「間」の設定を感じます。
そうした場合への対応はいくつも考えられます。
何もしないで空白のまま待つことはしません。
復習になるような問題を出してもいいし、自習を指示してもいいのですが、
小話をするのは、そんなときです。
いきなりは、しません。
授業時間は子ども達が活動・活躍するためにありますから、
一応振ります。
話をしたい人、いますか? と。
はい、やります、
と名乗り出る子はまず、いません。
先生、お願いします、
となります。
ふと生じた「すきま時間」。
教員としての話す力をUPさせる好機ですが、
優先すべきは子ども達の学力形成ですから、節度をもって臨むのはもちろんです。
2.惹きつける話し方も授業力
教師の役割(使命)は、子どもの学力形成にあります。
そのためには自らの授業力の向上をめざし、日々修養に努めなければなりません。
聞き手を引き付けるような話し方。
これも授業力の一つです。
話が上手。
これに越したことはありません。
教師の仕事は、話すこと抜きには語れません。
授業はもちろん、
面接でも面談でも、保護者会でも、朝会や集会でも話す場面があります。
着任式や離任式で数百人を前にして話すこともあります。
磨かなくては。
そんな時、
元気づけるような話、
意欲を持たせるような話、
心を揺さぶるような話、ができたらいいな、と思います。
野口芳宏先生の著書にこんな言葉がありました。
話の上手な先生は子どもに好かれ、授業は楽しく進行する。
野口芳宏著「授業の話術を鍛える」
名著復刻 授業の話術を鍛える:野口 芳宏 著 – 明治図書オンライン (meijitosho.co.jp)
授業が始められない、ぽっとできた空白の時間。
いくつかの持ちネタの中から話をさせてもらおう、というわけです。
どんな話をしたのか、2つ紹介しましょう。
3.小話1 「おいくつ?」de 勘違い
スーパーに買い物に行きました。
店に入ると、
目の前に梨がピラミッドのように積まれていました。
初入荷したのでしょう、
特設コーナーができていました。
担当の人がいて、
試食用に切ったものを店に入ってきたお客さんに渡していました。
私も受け取りました。
少し離れたところでしゃりしゃり食べていると・・・
高校生くらいの女の子とお母さんが店に入ってきました。
同じように試食を受け取り、それを食べながら、
おいしいわねぇ、買いましょうか、
と話しています。
その声を聞きつけたのか、
店員さんがその親子の方へやってきました。
女の子に話しかけます。
店員さん:おいくつですか?
聞かれた女の子。にこにこして答えました。
16です。
店員さんはフリーズしました。
その場に居合わせた私は、笑うに笑えない状況。
解説するまでもありませんが、
おいくつですか、に高校生の女の子は年齢を聞かれたと思ったのでした。
店員さん、このあとどうしたでしょう?
接客のプロの対応
一瞬の間があいたと思いきや、こう言いました。
何個包みましょう?
もしも、このように言ったら面倒なことになっていたでしょう。
16歳ですかぁ・・・で、梨はいくつにします?
勘違いしたことに気づかせてしまい、恥をかかせることになります。
接客のプロは、お客さんの勘違いをなかったことにしていました。
小話2 レリーフは顔を埋めて作った?
夏休み明け。
学校が始まった初日にした小話です。
授業というより、
夏休みの思い出をおしゃべりしあう、そんなひとときでのことです。
先生の夏休みは? に応えての話。
私事で上高地を旅行しました。
子ども達には、そのときの写真を見せながら話しました。
ここは「上高地」という観光地です。
山々の美しい景色が広がる国立公園です。
すばらしい眺めのこの地を世界に紹介した人がいました。
イギリス人でW・ウェストンさんという方です。
みなさんは、
『日本アルプス』という言葉を聞いたことがありますか?
「アルプス」は、
ヨーロッパの多くの国にまたがっている山脈です。
それに「日本」がくっついて
『日本アルプス』って何かヘンだな、と思っていたのです。
行ってみて分かりました。
ウェストンさんの書いたものからきているそうです。
その功績を讃え、現地には顔のレリーフが設置されています。
顔が埋めてある?
少し前を中学生くらいの女の子と
低学年くらいの男の子が歩いていました。
お姉ちゃんが、弟に上高地の話を聞かせてあげていました。
案内板のところで立ち止まると少し先の方を指さして、
見て、あの崖のところ。
あそこにウェストンさんの顔が埋めてあるんだよ。
と言いました。
それを聞いた男の子、とてもびっくり。
えっ、生きたままで?
男の子の頭のテレビに映ったのは、恐らくこんな光景です。
数人の男たちに取り押さえられるウエストンさん。
抵抗むなしく、山中に生きたまま埋められてしまいました。
数年後、
化石のように固められたウエストンさんが発見された・・・
あの崖は、その事件現場なのか?!
彼の勘違いを想像したら、思わず吹き出しそうになりました。
ここは笑っちゃいけません。
ぐっと口を押えました。
あわてたのはお姉ちゃんです。
幼い弟の思い違いを正していました。
小っちゃい子だから
レリーフというものを知らなかったのでしょう。
じゃあ、レリーフって、どのようにして作るのでしょうか。
やっぱり、
粘土みたいなものに顔を埋めて作るのでしょうか?
W・ウェストンさんのレリーフについては、
上高地公式ウェブサイト参照 http://www.kamikochi.or.jp/
4.おわりに
落語家さんは、
初めに小噺をします。
本編に関連のある話をしながら間をつかみ、お客さんを引き込んでいきます。
何しろ、
ほぼ音声による言語だけで、聞き手の頭の中に物語を描かせるのですから、
小噺は、その準備(ウォーミングアップ)であるし、
お客さんをその世界へ誘う手助けの意味もあるのでしょう。
授業の場合は、どうか。
授業の形態は様々ですから、
一概に言えませんが、
小噺のようなものから始めると、その後の授業のノリがよくなる、
というのもあるのではないかと思います。
授業づくりにおいて参考になる事がありましたら、幸いに存じます。
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