ある生命保険会社が実施した意識調査についての新聞記事がありました。(2023/11/29 読売)
教員の苦労していることのTopは「授業の準備」だった、というものです。
そりゃそーです。
勤務時間にそれをする時間が端(はな)から割り当てられてないのですから。
時間外にするしかないのです。
それで苦労しているのです。
教員にとっては分かり切ったことなので、以下を読むまでもありませんが、
この記事が教育現場における働き方を考える上での少しでもお役に立てればと思います。
1.授業の準備をする時間がない
2.勤務時間外でするしかない(実情)
3.授業準備こそが大切!
4.いつも、追われている(教師という仕事)
※調査結果は、下記のサイトでみることができます。
1.授業の準備をする時間がない
授業をすることが教員の本分です。
にもかかわらず、
その準備をする時間は全くと言っていいほど保障されていません。
子ども達の学力向上にとって最も大切な事なのに、です。
教務担当のつくる1週間の「勤務割振」を見れば一目瞭然。
「授業の準備」をする時間は、端(はな)から設定されていません。
午後の3時半。6校時が終わり子ども達が下校していきます。
それから退勤時刻(5時)まで1時間ちょっとありますが、
その時間は、自由時間ではありません。
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職員会議だの学年会だの、
グループ会議だのが、月予定に組まれています。
放課後がたまに空いていることもありますが、
泉の如く仕事は湧いてきて、話し合いやら作業やらが入れられて
すぐに埋まります。
先生方は、明日の授業の準備をいつすればいいのでしょう?
一体どういうことですか、この現場。
午後5時を回ってようやくフリーになります。
明日の準備が始められるのかと言えば、さにあらず。
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まず、
プリントのまる付け、提出物の点検・評価・記録等をしなくちゃなりません。
家に持ち帰って処理する、というのは原則できない世の中になっています。
教室の片づけをしたくなってきますし、
蛍光灯がチラつき出したから交換しなくちゃ、と独り言ち
会議で分担された文書の作成もやっておかないと、と思ったりします。
お休みをしている子の親御さんへの電話もあるのでした。
なかなか授業の準備に取り掛かれません。
2.勤務時間外でするしかない
授業の準備は、
雑務(ではありませんが、それら)が終わった後になります。
退勤時刻はとうに過ぎていて既に勤務時間外ですが、
それは毎度のことです。
お子さんのお迎えがある人以外は、午後の7時8時に帰路に就きます。
遅い人は9時を回ります。
連日です。
帰宅すれば、生活があります。
家事があります。育児も洗濯もあります。
それから明日の授業の準備にとりかかれますか?
そんな気力、残っていたら不思議なくらいです。
でも、するのです。
しなくちゃなりません。
一度寝て、朝4時起きしてすることもあります。
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朝方の方が、案外いいアイデアが浮かんだりします。
時間との戦いになるので頭がフル回転するようです。
3.授業準備こそが大切!
授業準備を安易に済ませると、大変なことになります。
その場しのぎの授業行為に冷や汗たらり。
これは、教わる子ども達にとっても、よくありません。
度重なれば信頼を失い、そのうち自分に返ってきます。
うまく授業が流れなかったときは、落ち込みます。
準備不足を思い知ります。
授業の準備は欠かせません。
高学年の受け持ちになると、より深い教材研究が必要です。
(狭義の「素材研究」と言った方がいいかもしれません。)
教科書の内容を超える知識を持っている子どもがいるのです。
顔に出しませんが、教わる前から「もう知ってます」状態。
(実は、表面的な知識に過ぎないことが多いのですが)
そんな子達をも満足させる授業にしなくては、と思えてきます。
特に、歴史や理科など
学び直しておかないと対応がおぼつかなくなります。
これは、結構時間を要します。
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授業の準備は大変です。
やり始めれば関連することが次々に出て来て、きりがありません。
ですが、しっかりとやっておけば、
子ども達の様々な反応に対応しやすくなりますし、
それを地道に続けていくうちに教科に精通していきます。
いつのまにか、授業行為についての「引き出し」がいくつも自分に出来ています。
そうした授業の準備をする時間がないのがネックです。
4.いつも、追われている(教師という仕事)
いつも、追われているんです。
土日は、
休養日に当てたいところですが、ゆっくりしてばかりいられません。
学校のことが常に頭にあり、気が休まらないのです。
とにかく、授業の準備をしておかないといけません。
そう思ったら「ちょっと行ってくる」と家族に告げて、休日出勤です。
あーあ。休みの日ではなくなってしまいました。
子どもが出てくる夢は、最悪です。
いくら子どもが好きで教師になったとはいえ、これには参ります。
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その多くは悪夢で、
上手く指導できずに手こずっている自分がいます。
何をしてもダメ。
追い込まれていって、これは夢だと気が付いて気分はサイテー。
朝からぐったり。24時間勤務している感じです。
授業の事だけでなく、
生徒指導の面でも、追われているのです。
そういう職業なのだ!
と言ってしまえばそれまでですが、
精神疾患で休職している教育職員のニュースを見るにつけ、他人事とは思えません。
問題の根は、はっきりしています。
抱えている事が多すぎるのです。(自分の力量の不十分さは承知の上で、ですけど)
5.授業は、一回こっきりの消耗材
小学校の先生は、常に自転車操業です。
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準備した分だけ授業が進んで、また準備します。
それを学期中はずっとやっていきます。
夏休み、冬休みが来て、ほっとします。
漕がなくてよくなったからです。
この解放感は格別です。
準備した授業を何度か行う、なんてことはありません。
一回こっきりの消耗材です。
だから教科担任制にすると、一気に先生方は楽になります。
何度か使えるからです。
それ以外にメリットがあります。
授業で使うもの(教具や実験器具などの)準備・片づけが1度で済みますし、
同じ内容の授業を3回もすると、修正に修正が加わることで授業の質の向上が期待できます。
これって、子ども達にとって一番の良いことでは?
授業の準備はホントに大変です。
小学校の高学年ともなると一日6コマもあり
内容もぐっと高度になります。
2教科程度は専科教員が受け持ってくれますが行事もたくさんあって、忙しい。
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お店で例えれば、
授業という商品は、毎日新商品(!)です。
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しかも、なんと!
お客様(子ども達)のニーズにぴったり(となるような)仕様になっていて、
それを当日に6こ用意しておくんです。
これ、準備可能ですか?
10分程度で用意できたとしたら、一個一個の品質を疑います。
勤務時間外にせざるを得ない「授業の準備」。
そんな状況下にあっても
授業を楽しいものにしよう、という信念をもち熱意ある取組みがなされていることは、
触れておかねばなりません。
2022年度から教科担任制が本格的に導入されたのは必然の流れです。
高学年の4教科(外国語、理科、算数、体育)からのスタートですが、
1年生から4年生は依然自転車操業状態。さらなる改革が進むことを望みます。
めざしたいのは「楽しい授業」づくりです。
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